愛情を注ぐことと擬人化することは違う--『珍獣病院』を書いた田向健一氏(田園調布動物病院院長)に聞く
ウーパールーパー、ハリネズミ、アリクイ、カワウソ、テナガザル……。ペットブームはさらに深化して、「珍獣ドクター」は大忙しという。
──どんな珍しい動物が来ても診察するようですね。
動物が好きで獣医師になり、病院を構えた。頼りにされて、元気のなくなったペットを抱えて駆け込んでくる人がたくさんいる。必要としている人がいる以上、サボれない。
珍獣を飼っている人は、その動物が特殊であり、動物病院と名がついていても、ほとんど診てもらえないことはわかっている。しかし、具合が悪そうで、とにかく完璧でなくていいから、診てほしい、安心させてほしいと思って来る。いわばその不安な気持ちを鎮めるのに全力を挙げている。
──ここで言う珍獣とは。
厳密には犬猫病院であっても、どこも動物病院と冠している。その動物病院に来院する動物は三つに分けられる。犬、猫、そしてエキゾチックペットだ。このエキゾチックペットを珍獣と言っている。つまり、珍獣とは人が飼っている犬猫以外のものすべて、ということになる。
──大学の獣医学では教えられない。
大学の授業は、牛、豚、鶏といった産業動物が60%、犬が35%、猫が5%ぐらいの配分ではないか。農林水産省の管轄で獣医師免許は与えられる。農水省が国家資格を与えるだけに農林水産業を守るための資格が基本。もともと食料確保のために獣医師を国として作ろうとしたものだった。口蹄疫や鳥インフルエンザへの対処も獣医師の仕事のうちだ。