愛情を注ぐことと擬人化することは違う--『珍獣病院』を書いた田向健一氏(田園調布動物病院院長)に聞く


──それも、社会が豊かになって変わってきた?

教育現場はそんなにリアルタイムで社会の動きについていってはいない。食べるための産業がまず日本社会で重要であり、食べる以外のペット動物も獣医師が扱うようになってきたが、まだまだだ。しかし、犬猫と同じ構図で、自分が飼っているペットが病気になったら動物病院に連れていこうとする。極めて自然な流れになっている。

──先ほど大きなトカゲを抱えた女性が来診された……。

電車に2時間乗って連れてきたという。10年前にそういう人はいなかった。女性がトカゲをめで、家で飼って楽しむ。元気がなくなり、駆け込む先はここしかないと。最近のペットは人間の都合で輸入され、飼われている。犬猫とは動物種は違うが、飼い主が求めているものは違わない。第三者はとやかく言いたくなるようだが、飼っている人にとっては同じくペット動物なのだ。

──珍獣の病気について症例などは豊富にあるのですか。

診察には手探りの面もある。私自身、今も大学で両生爬虫(はちゅう)類の病気について研究している。その成果を医療の現場へいずれ還元していきたい。もっとも、ほかの先進国は先行している。先進国が珍獣の医学で進んでいるのは豊かさの反映なのだ。

特に米国はしっかりした学会もある。実は明日から行くが、その学会は両生爬虫類などエキゾチックペットの学会で、大会を6日間開く。世界から人が集まってくる。そういった学会で交流を深めたり、向こうの文献を見て活用したりして、日本で実践している。

──新治療法を開発して、それを発表してもいます。

カエルの難病であるツボカビ症に人間用の水虫薬を処方して効果を上げた。これは英文で発信して好評だった。金魚の手術のためにエラ呼吸専用麻酔装置を考案したり、カメの手術の際に甲羅の新しい切開方法を工夫したりもした。これらはみな地道な作業の積み重ねの結果だ。

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