若者に教えたい「資産形成より大事な金融の本質」 田内学×白川尚史「異色の受賞小説家」対談前編
白川:私は、教育などを通じてもっと気軽に投資に触れられる機会が増えたらいいのではないかと思っています。小さな成功をしたり、小さな失敗をしたり、そういった経験をすることって、新しいことを始めるには不可欠でしょう?
例えば、私自身、4~5年前にスノーボードを生まれて初めてやってみたのですが、はじめは全然滑れなくて、とんでもない頭の打ち方をしたりして、「二度と滑りたくない」と思った経験があります。
スキーにしても、生まれて初めて板をはいた人が、いきなりジャンプ台から滑り降りたりはしません。もちろん、100万人に1人くらいの確率で、いきなりすごく飛べちゃう人もいるかもしれませんが、多くの人は少しずつ練習して、段階的に難しいコースに挑むでしょう。
投資においても、リスクを正しく捉えることはとても重要です。
まず”雪に慣れること”が重要
田内:なるほど。
白川:いまは「利益が1000万円を突破しました」というような自慢話を知り合いから聞いたり、ネットで見たり、「日経平均、史上最高値更新!」といったニュースに触発されたりして、「自分もやってみたい」という気になった人も少なくないのではないかと想像します。
ですが、仮に最初はうまくいっても、それが長続きするとは限りません。とくに、情報の不足や、ニュースに踊らされて、自分が取れる以上のリスクを取ってしまうことは避けるべきです。
スキーやスノボでは、まず雪に慣れることが重要です。そのためには、スキー場に行く回数を増やすことが重要なのは自明でしょう。投資についても、正しくリスクを把握するために、まずは投資という行為への接触量を増やすことが大切なのではないでしょうか。
投資に関しては、「選択的注意」の問題もあります。洪水のように情報が溢れる今日において、自分が何を気にして生きているかによって耳に入ってくる情報が変わってくるので、長く投資に触れれば触れるほど、いろいろな情報が手に入るわけです。
そういう人が増えるような教育に、学校での金融教育もなってほしいなとは思っています。