若者に教えたい「資産形成より大事な金融の本質」 田内学×白川尚史「異色の受賞小説家」対談前編

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田内 学(たうち・まなぶ)/社会的金融教育家。お金の向こう研究所代表。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』など(撮影・今井康一)

田内:先日、美大の学生さんたちの話を聞いて、少し考えさせられました。

彼らが作品を作るのには、結構なお金がかかるらしいのです。そして、そのお金を貯めるためにはバイトをしなくてはいけないので、絵を描くことに集中できないという、なんとも本末転倒な事態になってしまっているという話だったのです。

そんな彼らに資産形成を教えるのは、「バイトで貯めたお金を投資で増やすにはどうしたらいいか」「増やせたら夢が早く実現できる」という短絡的なマインドを助長するだけなのではないかと心配になりました。

彼らに教えてあげるべきことは、自分が「投資される側」になることではないでしょうか。

例えば、クラウドファンディングで「自分はこういうことをやりたいと思っているから、お金を出してください」とか。日本ではまだクリエーターが投資を受ける例はあまりないかもしれないけれど、働いて貯めたお金を投資で増やすのではなく、必要なお金は初めから投資してもらったり、借りたりしたらいい。

そもそも金融とは、お金を融通するという意味です。そのために金融っていうものがあるんだってことを知らない人が、意外と多かったりするんですよ。

「借金は悪いもの」という勘違い

白川:世の中がよりよくなるためには、投資を受けた若い人たちが活躍できる機会は不可欠ですからね。そういうチャレンジをしてくれる人がどんどん増えてほしいとは思います。

田内:とくに、「借金は悪いもの」と思い込んでいる人が多くて、大学に入っても、せっかくそこでいろいろと学べるのに、勉強そっちのけで奨学金返済のためにバイトに明け暮れてしまったりする。実にもったいないと感じました。

そういう意味で、自分がお金を借りたり、融通してもらう側になって、そのうえで何を実現したいか。お金を増やすための金融教育とは別に、お金は目的なのではなくて手段でしかないと、しっかり教えてあげなくていけないと改めて思いました。

後編:「東大理系卒で金融業界」の僕らが小説を書いた訳

(構成:小関敦之)

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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白川 尚史 作家、マネックスグループ取締役兼執行役

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しらかわ なおふみ / Shirakawa Naofumi

2012年東京大学卒業。在学中、工学部松尾研究室に所属、弁理士資格取得。2011年6月ソシデア知的財産事務所入所。2012年10月AppReSearch(現PKSHA Technology)を設立し、同社代表取締役に就任。2019年9月PKSHA xOps代表取締役を経て、2021年6月にマネックスグループの取締役に就任。2022年4月にマネックスグループに参画し、取締役兼執行役。2023年10月、著書『ファラオの密室』が、宝島社が主催する第22回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。

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