ハマスとの停戦めぐり揺れ動くイスラエル国民 人質の全員解放か、ハマスの壊滅か…割れる意見

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しかし人質4名の奪還とガンツの政権離脱というニュースがもたらされたことにより、わからないと答えた人が14ポイント減少し、停戦案に賛成する人が9ポイント増加し、反対も5ポイント増える結果となっている。

オスロ合意以降、イスラム過激派によるテロが活発化してイスラエル世論が右傾化し、ネタニヤフ率いるリクード党が右派や宗教党と手を組んで支持を伸ばしてきたが、ここに来て中道のガンツやラピッド、さらに左派への揺り戻しが来ている。

左派への揺り戻しの兆し

ネタニヤフ首相の汚職や司法制度改革に反発する声も大きく、今秋に選挙が行なわれればネタニヤフは退陣を免れないだろう。

では、次期首相はガンツになるのか。ガンツはIDF参謀総長経験者である。イツハク・ラビンやアリエル・シャロンなど、右派・左派に関わらず歴代首相の中には国防の最前線で戦った人物が多い。IDFにはイスラエル国民が絶対的信頼を置いているからである。

ガンツは政界入りしてから副首相兼国防相、国会議長を歴任しているが、首相としての手腕は未知数である。次期首相の有力候補であることは確かだが、ガンツにこの難局を乗り切るだけの政治力があるのか、不安な要素も多いと言われる。

現内閣では、右派からも不満が出てきている。イタマル・ベングビール国家安全保障相は、停戦案に応じるなら政権を離脱すると公言している。ベングビールが離脱するなら現政権は過半数割れとなるため、ネタニヤフはこれを阻止したい。

つまり現行の停戦案に応じる可能性は極めて低いだろう。中道のガンツが離脱し相対的に右派の影響力が強まるならなおさらである。

4人の人質奪還という喜ばしいニュースとは裏腹に、国民の過半数が総選挙に賛成し、現政権に不満を募らせている。ネタニヤフについては、自らの政治的延命を図っているとの批判が高まっている。

イスラエルは中東で唯一の民主主義国家を標榜しているが、今その真価が問われている。

谷内 意咲 ミルトス代表

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たにうち・いさく

1972年大阪生まれ。1998年ヘブライ大学ヘブライ言語学科、ユダヤ学学科卒。1999年ユダヤ・イスラエル・中東関連の出版社ミルトスに入社、2016年同社代表取締役に就任。ヘブライ語聖書対訳シリーズ編集委員、雑誌「みるとす」編集代表。

著書に『今日からわかる聖書ヘブライ語』『今日から読めるヘブライ語』、訳書に『賢者たちの【聖書】伝説 上・下』『ユダヤジョーク 人生の塩味』(いずれもミルトス編集部編訳)など。

NHKのBS番組「ダークサイドミステリー」の「神秘の古代ミステリー 徹底検証!日本・ユダヤ同祖論」(2023年7月13日放送)に、ヘブライ語の専門家として出演。

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