村山斉・東京大学数物連携宇宙研究機構長--「わかりたい」が原動力、人に説明する能力を高めよ《世界で活躍する研究者の条件》
「無国籍、グローバル、知的集約的、しかも実績主義」なのが研究者。欧米の一流大学では、それが徹底している。トップレベルの研究者に、世界で活躍する条件を聞いた。
--日本の若手研究者を見ていて感じることは?
日本の研究者は、思いつきを話したりするのを恥ずかしがるが、周りにもっと自分のアイデアをぶつけてみてもよい。信頼できる相手と議論をして、そのアイデアが望み薄だとわかったら、無駄なことをせずに済んだと考えるべき。
研究人生には限りがあるので、そのアイデアは脇に置いて、別のことを始めればよい。アイデアを否定されても人格を否定されたわけではない。なのに日本の大学院生は、すぐしゅんとなってしまう。
研究はうまくいかないことがほとんど。だからレーダーをいつも広く張っておき、複数のテーマを用意する。もちろん一つのことに集中しないと結果が出ないの事実だが、一つのことにすべてを懸けても、うまくいくとは限らず、上手なバランスが求められる。
--研究テーマを間違えると成果が出にくいから、悩む研究者は多い。何が決め手になりますか。
悩むのは私も同じ。研究者の間では「鼻が利く」という言い方をするが、最終的にはそこに行き着くのかもしれない。運も結構大きい。
ただし、研究者が本当に心から情熱を注げる対象でないと、うまくいかない。「知りたい」「わかりたい」という気持ちが第一だ。
--29歳で渡米し、36歳でカリフォルニア大学バークレー校で教授に就かれました。米国のよさとは?
自由さかもしれない。29歳のときに初めて米国での学会に出席した。研究発表が終わると、こちらは一介のポスドク(博士研究員)なのに、いろんな人が面白かったと声をかけてくれる。論文を読んで尊敬していた先生も、「あの発表はよかった」と褒めてくれた。