異端の工作機械メーカー・森精機が挑む世界戦略の成否
もちろん、森社長は財務指標の改善を喫緊の課題に挙げている。「当社の10年平均での営業利益率は、GDPの平均成長率とほぼ一緒。仮に資本のすべてが借入金なら、利益を全部、平均金利に取られかねない。自己資本比率50%は低い。早期に70%に引き上げたい」(森社長)。
投資回収は当面先か シナジー創出に要時間
メドはすでについている。10年3月期と11年3月期の赤字で積み上げた欠損金を取り崩せば、12年3月期の利益の多くをキャッシュとして手元に残すことができる。「近視眼的なセコイ話だが、それで借入金を返す、という計算です」(森社長)。
巨額投資の成果が利益上の数字として表れるには、時間がかかる。ただ森精機はギルデマイスターの持ち分法会社化による利益貢献を、今期の業績予想に織り込んでいない。得られる持ち分法利益は、当面、のれん償却で相殺される見通しだ。
提携のシナジー創出も容易ではない。ギルデマイスターへの出資は、過去に森精機が行ったような一社を丸ごとのみ込むM&Aとは違う。世界有数のトップメーカー同士による大連立だ。日本とドイツでは、当然、製品仕様も生活習慣も異なる。生産や販売の統合をどこまで進め、業務の効率化を図れるか。道中には混乱も予想されるだろう。
森精機単独での体質強化も必要だ。直近の12年3月期第1四半期決算。多くの同業他社が営業黒字を確保する中、森精機は赤字発進に甘んじた。東日本大震災による混乱が影響したことは確か。だが、「テクノロジーセンターの維持費やショーへの出展費用など高い固定費比率が問題では」(業界関係者)との指摘もある。