異端の工作機械メーカー・森精機が挑む世界戦略の成否
ヤマザキマザック、オークマと並んで工作機械「御三家」と呼ばれる森精機製作所。同社の経営は、しばしば“異端”と評される。
森雅彦・現社長体制が仕掛けてきた積極的な買収・拡大政策がその主な理由だ。ITバブル崩壊で複数の老舗メーカーが経営に行き詰まった2000年代初頭。豊富な手元資金を生かし、次々とM&Aを実施した。
破綻した池貝の傘下にあった太陽工機を子会社化(01年)し、名門・日立精機の事業を譲受(02年)。04年には創業の地・奈良から、老舗の工作機械メーカーが群居する名古屋へと本社機能を移転し、スイスの工作機械メーカー・ディキシーマシーンズ(07年)、フランスの部品メーカー・トブラー(08年)を相次いで買収。10年には、ソニーの計測機器部門(現マグネスケール)も手に入れた。
元来、工作機械業界は、合併や買収の起きにくいことで知られる。オーナー企業が多いうえ、特殊技術に特化した「ニッチトップ」企業がそれぞれの分野で顧客を囲い込んでおり、再編への機運が高まりにくいからだ。
それでもM&Aの結果、森精機の業績は03年3月期からリーマンショック直前の08年3月期まで、右肩上がりで成長。“異端”経営は、着実に実を結び続けてきた。
その優良企業が今春、過去最大規模の巨額投資に打って出た。相手は欧州最大手の独企業、ギルデマイスターだ。
両社は09年に互いの株を数%ずつ持ち合う形で提携関係をスタート。製販連携や部材の共同調達を進め、協力関係を築いてきた。今春、ギルデマイスターが第三者割当増資と新株発行を実施。この大半を森精機が引き受け、ギルデマイスターへの出資比率を20・1%まで高めた。これによってギルデマイスターは森精機の持ち分法適用会社となった。