異端の工作機械メーカー・森精機が挑む世界戦略の成否


 提携で得られるメリットは多い。まず販売面での連携だ。森社長は語る。「たとえばトヨタ自動車は三河で意志決定をし、タイや南アフリカやポーランドに機械を据え付ける。工作機械メーカーが世界中に同じ機械を売り、サービスするには、ある程度の規模が必要」。

その“ある程度の規模”を、売上高千数百億円、サービス拠点50カ所、従業員3000名と想定。アジアや北米に強い森精機と、欧州や南米、ロシアにネットワークを持つギルデマイスターの拠点を生かせば、世界規模の販売・サービス網が構築できると考える。7月には両社合弁による販売統括会社をスイスに設置すると発表した。今後は、各国で販売拠点の統合を進める方針だ。

生産面での効果も大きい。買収したディキシーマシーンズの工場を除けば、過去、森精機は海外に自社工場を持たなかった。一方のギルデマイスターはドイツのほか上海にも工場を設置。ギルデマイスターの工場を活用すれば、海外生産の選択肢は一気に拡大する。

すでに一部ではOEM(相手先ブランドによる生産)を開始した。12年には、森精機にとって初の海外生産拠点となる北米工場が稼働する。これで輸出一辺倒を脱し、日米欧亜の4極生産体制が手に入る見込みだ。「今後は研究開発も、両社で重なり合っていた部分を統合していく」(森社長)。

日本とヨーロッパの最大手級が手を組む。その方程式は誰の目から見ても完璧だ。しかし、実現に向けて払う代償も大きい。

これまで森精機は、「業界一バランスシートのよい会社」と評価されてきた。強固な財務基盤こそが、00年代の拡大戦略の拠り所でもあった。だがギルデマイスターの増資引き受けのため借入金を増やした結果、自己資本比率は70%台から54・6%に低下(囲み左下図)。同業他社からは「あちらの借金を肩代わりしただけでは」と冷ややかな声も漏れ聞こえてくる。

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