ジム・ロジャーズ「資産防衛に金と銀を保有せよ」 必ずやって来る「世界恐慌」に今から備える
渡邉氏は、次の危機に備えて「米国債3分の1、日本株3分の1、日本の不動産3分の1」のポートフォリオにします。このオペレーションによって資産を守ることはできるというのが渡邉氏の考え方です。これについて、ジムさんはどんな具体的なアドバイスをしたでしょうか。
ロジャーズ氏は言います。「私も渡邉会長の考えに似ています。私のポートフォリオの大半はアメリカのドルです。ドルのキャッシュや現金に近いもの、たとえばMMFなど短期の金融資産を保有しています。私はいずれ大不況が来ると予測していますが、そのときには、世界中が安全資産として考える米ドルが、さらに買われるでしょう」。
このように、渡邉氏やロジャーズ氏などの富裕層の多くは運用のベース通貨をドルにしている方が多いです。その理由はドルで購入できる金融商品が豊富、基本的に金利が高く安定している、安全資産の地位を保っているなどの理由からです。日本円だけに資産が偏りすぎている場合、リスクとリターンが異なるアセットに分散を意識して、少しずつポートフォリオを見直してみてもよいでしょう。
最も怖いのはインフレ、日本の不動産には投資しない
ロジャーズ氏は続けます。「私が今いちばん心配しているのはインフレです。インフレが続くと、金や銀が上がっていきます。一方で金利が高くなるので、不動産や株式の価値は下がります。全面的な資産安になってしまうことを懸念しています。
日本の不動産も遠からずバブルになるような高値圏にあるため、私にとっては投資対象ではありません。もともと売りたいときにすぐに売れない流動性の低い資産は私好みではありません。近いうちに金利が上昇すれば資産価値は下がるので、不動産は相当ネガティブです」
日本の不動産は円安や低金利などもあり、海外の投資家からも着目されています。しかし、ロジャーズ氏は人口が減り続けている日本の不動産に対しては以前からネガティブです。円預金や日本の不動産にポートフォリオが偏りすぎている方も多いかもしれませんが、資産の一部をドルや金などで保有することもわるくないとロジャーズ氏は言います。
「世界恐慌が来たとき、投資家たちは安全だと思っているドルに群がると考えています。そのときにドルはバブルになるかもしれません。ただ、ひとつ警告しておきたいのは、歴史的に見てもアメリカはどの国よりも借金が増えています。借金が多い国ですから、ドルは絶対的に安全な通貨とはいえません」(同)
このように、ロジャーズ氏はドルも完璧ではないと言います。しかし、他に変わる通貨が見当たらないために、消去法で現在はドルを保有しているようです。最終的には渡邉氏やロジャーズ氏のアドバイスを鵜呑みにするのではなく、みなさんがご自身でポートフォリオを考える必要があるのではないでしょうか。
世界標準の資産運用の方法としては、値動きが異なる資産(アセットクラス)に分散投資をすることが推奨されています。
具体的に言えば、株式、債券、オルタナティブ(株式や債券といった伝統的な資産以外への投資)、キャッシュなど、異なる資産に分散をすることによって、リスクを低減しながら、リターンを上げる効果があります。日本ではまだまだ多くの方が資産の分散をしていないと思われますので、この機会にご自身の資産運用の見直しを検討してもよいかもしれません。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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