この状況を早急に打開するため、ウクライナにロシア領内への攻撃を認めるよう欧州各国から緊急の要請があった。この結果、アメリカだけでなく、ドイツもハルキウ州に接したロシア領に限って自国製兵器でロシア領攻撃を認めた。
しかし、今回の部分的容認の決定にゼレンスキー政権は不満だ。もともと部分容認決定は、保有するアメリカ製兵器によるロシア領内の攻撃を全面的に認めてほしいとのゼレンスキー政権からの必死の要請に対する、バイデン政権からの「非満額回答」だったからだ。
なぜ「非満額回答」なのか
ウクライナはすでに自国製の攻撃用ドローンで、ロシア領内深くにある軍事施設や石油精製施設などを攻撃している。しかし、ドローンでは破壊力が小さいため、最長射程300キロメートルのアメリカ製長距離地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)による遠隔地への攻撃も認めるよう求めていたが、結局ワシントンは認めなかった。
2024年夏に欧州諸国から供与が始まるとみられているアメリカ製戦闘機F16によるロシア領内への攻撃も認められなかった。
今回の部分容認を受けた実際のロシアの国境州への攻撃は、早ければ2024年6月中にも実行されるとみられる。注目はその際、ロシア軍がどのような反応を見せるかだ。
侵攻がもはや「米欧とロシアとの戦争だ」との認識を示すプーチン大統領としては、自国領内がアメリカ製高機動ロケット砲システム「HIMARS」(ハイマース)などで攻撃されて損害を受けた場合、国内の保守派世論から批判を受ける事態も否定できない。
国防相をショイグ氏からベロウソフ氏に替えた直後でもあり、アメリカに対し、従来以上に強硬な反応を示す可能性も相当あるだろう。
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