60歳で難病「岸博幸さん」残りの人生の"優先順位" 病になって気づいた事、インタビュー前編

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――副作用といえば、髪の毛も抜けたんですよね。

そう。あれは正直言って、気分いいものではなかったです。抜けるのがわかっていたので、事前に髪の毛を三分刈りにしましたが、抗がん剤を初めて数日すると、抜け始めた。

わかりやすく言うと、シャワーを浴びるたびに手にべったり髪の毛がつくわけですよ。朝起きると枕やベッドに髪の毛がいっぱい散っている。あれは非常に不快でしたね。

恩人たかじんさんの写真がお守りに

ただ、逆に言えば、こういう経験をする機会ってあんまりないじゃないですか。だから気分を切り替えて、「これはこれで楽しんでおこう」みたいなことは考えました。

これは本にも書いたけれど、恩人であるやしきたかじんさんも、抗がん剤でハゲになったんです。それで僕が入院しているとき、たかじんさんの奥さんが(脱毛したときの)写真をいろいろ送ってきてくれて、「彼も大変だった」って連絡をくれたんです。

それを読んで、自分もがんばろうという気になりました。写真は今もスマホの待ち受け画面になっています。お守りです。

――無菌室フロアでの入院中はとても大変だったと思いますが、メンタル面はどうやって保っていたのでしょう。

吐き気や口内炎で具合が悪いし、髪の毛が抜けて不愉快だし、入院中は面白いことはなかったですよ。でも元来、暗い人間ではないので、うだうだしながらちょっとした楽しみを見つけて、という感じで過ごしていました。

岸博幸 経済評論家 余命10年
岸博幸さん(撮影:今井康一)

無菌室フロアにいて思ったのは、長期入院されている方が多いからか、どうしても皆さんの表情が暗い、ということ。特に中高年の男性ですね。

女性の患者さんには比較的明るい方が多くて、だんだん仲良くなって、お互いに励まし合ったりしていたんですけど。ここでも男性と女性の違いが明確にわかって、興味深かったです。日本の中高年男性ってまじめってことなんだけれども、面白みがないですね。

――入院中、岸さんは余命10年を“ハッピー”と“エンジョイ”で生きようと決めました。

入院中にまずやったのは、反省です。

元々、僕は自分勝手な人間で、45歳で結婚するまで好き勝手やっていたんですよ。仕事も自分がやりたいこと、仕事以外でも自分が好きなことを優先していた。好きなヘビメタバンドのコンサートとか、ひいきにしているNBAのチームの試合とかがあれば、仕事そっちのけでニューヨークに行っていたし。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事