今年もまた繰り返すの?財政検証後の年金叩き 5年前に「答え」を書いた資料をいまだ放置
そこで、年金局は、2019年の財政検証の時に次のような資料を作っていました。
資料4では、賃金水準はいろいろとバリエーションが挙げられているわけですが、例えば今、賃金月額が32.9万円~54.9万円の夫婦世帯があるとします(『国民生活基礎調査』からのデータに基づいています)。この世帯は、日本の公的年金では、単身または1人分の16.5万円~27.4万円となる世帯と同等に扱われることになります。
この世帯が、40年間保険料を納めると、受け取る年金は夫婦2人分で、19.8万円~24.3万円になり、単身または1人分は、夫婦2人の半分9.9万円~12.1万円になります。
こうした賃金水準、年金の給付水準に属する世帯は、いろいろな世帯類型が考えられます。
同じ共働き世帯でも、ともに正規雇用で就労している人たちもいるでしょうし、共に正規雇用以外で就業している人もいるでしょう。また、この賃金水準に属する人たちには片働き世帯もいます。もちろん、正規雇用で就労している人も入れば、正規雇用以外で就労している人もいます。
世帯類型に関係なく保険料も給付額も平等に設定
そうした世帯類型の人たちは、世帯における1人当たり賃金水準が同じなのであれば、保険料も、年金の給付水準も、そして所得代替率も同じになるわけです。しつこいようですが、年金は、1人当たり賃金が同じならば、世帯類型とは関係なく、負担も給付も同じになるように設計されているからです。
たとえば、年金局が2019年に作った資料4によれば、賃金月額が32.9万円~54.9万円の夫婦世帯には、共働き世帯・共に正規雇用10%、共に正規雇用以外1%、共働きと正規雇用以外12%、そして片働き世帯・正規雇用で就労74%、正規雇用以外3%との世帯類型の分布があることが示されていました。同様に、単身世帯では男女別に正規雇用、正規雇用以外の割合も示されていました。
この資料は、昔とは異なり共働きの世帯が増えてきたのだから、それに合わせて年金の改革が必要だ、というようなよく聞く話、私の言う「ヒューリスティック年金論」に向けて、それは間違えていますよと言うために作られた力作だと思います。
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