今年もまた繰り返すの?財政検証後の年金叩き 5年前に「答え」を書いた資料をいまだ放置

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ところがこの「多様な世帯類型における所得代替率」という資料も、この資料が作られて5年も経つのにみんな知らない。メディアは誰も報道しない。そして、みんなで、年金は不安だ、将来は不安だ、時代に合っていない年金は抜本改革が必要だと相も変わらずの状況が続いてきたわけですね。

私に問い合わせてきた記者の番組も、放映時には最後に「現行の年金制度どう思う?」へのアンケート調査結果として「抜本的に見直す」が54.9%、「廃止すべき」が9.4%もあることを紹介していました。まぁ、仕方がない。それが昔から変わらぬ年金まわりの風景というものです。

そういえば、次のような話もありました。

「ちびまる子ちゃん」の家族で年金を考えてみよう

ある女性誌のインタビュアーからの、マクロ経済スライドによる年金給付の実質価値の減額の意味を教えてほしいとの質問に、次のように答えました。

「マクロ経済スライド」という仕組みがある。社会保障制度に詳しい、慶應義塾大学商学部教授の権丈善一さんが説明する。
「ちびまる子ちゃんの家族を考えてみましょうか。世の中で物価が3%上がったとします。その時、友蔵の年金が3%上がったら、それは実質価値が保障されていると言います。しかし日本の今の年金では、友蔵の年金は2.6パーセントしか上がりません。その差額0.4ポイント分が、実質価値の減額という意味です。その0.4ポイント分はまるちゃんの将来の年金に友蔵から仕送りされ、まるちゃんが受け取る年金が増えることになります。それが2004年に導入された『マクロ経済スライド』です。難しいかもしれないけど、この、孫、曾孫への仕送りの仕組みで日本の年金が、まるちゃんが年をとっても、生活の柱になる給付水準を保障することができるようになりました。」(権丈さん)

女性週刊誌では、この文章がどのように活用されたのか……おもしろかったですよ(笑)。誌面では1カ所、僕が話した「まるちゃん」が「まる子ちゃん」に修正されていましたけど、たまちゃんは、まる子ちゃんと言わないなぁ。

最後に、私が年金部会に提出した2つの資料がある第14回年金部会のホームページ、および第15回年金部会のホームページを紹介して、本日は、このあたりで終えようかと思います。お手隙の方には、両ページにある「権丈委員提出資料」をご笑覧いただければ幸いです。

権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授

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けんじょう よしかず / Yoshikazu Kenjoh

1962年生まれ。2002年から現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。著書に『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障 増補版』、『ちょっと気になる医療と介護 増補版』など。

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