「カスハラ」法整備でもそう簡単に解決しない事情 「お客様は神様」で生きてきた中高年の壁も
逆に、ある役所に勤める相談者さんは、「カスハラは低所得層に多い」と言っていました。公務員やバス・電車などの交通インフラ関係者などは、一般企業よりも「入場禁止」「提供拒否」などがしづらい環境に置かれています。その相談者さんは「低所得層と思われる人は、拒絶できないこちらの立場をわかったうえで過度な要求をすることがある」と言っていました。
「ダブルハラスメント」に苦しむ人も
ここまで年齢や所得の例をあげてきましたが、あくまで相談者さんから聞いた一部のケースにすぎません。ストレス解消や憂さ晴らしの意味でカスハラする人もいますし、企業側の「注意事項」「お客様へのお願い」などに目を通さず相手に非があると決めつけて怒る人もいます。
これを書いている筆者自身も、無自覚のうちにカスハラをしていたかもしれませんし、ここまで自戒の念を込めて書いてきました。現段階ではカスハラの線引きが曖昧だからこそ、「自分は絶対にしないから大丈夫」という思い込みを捨て、「個人の尊重や自分らしく生きる」という風潮を拡大解釈せず、すべての人が気をつけるくらいの社会になったほうがいいように見えるのです。
もし行政や企業に対策を任せるだけにすると、カスハラは収まらず、逆にますます社会問題化してしまうリスクがゼロとは言えません。すると、「すべての状況でやり取りを録音・録画される」ような監視社会になり、ネット上で拡散されることを恐れて窮屈な日常を強いられてしまう可能性もあるでしょう。
行政や企業の主導による対策の共有や専門家のサポートが受けられる環境作りが求められるのはもちろんですが、社会を構成する個人がカスハラを自他ともに予防するようなムードを作っていくことが大切ではないでしょうか。
そして最後にもう1つ、企業側が大前提として忘れないでほしいのは、「ブランドや営業利益を優先して、社員を守ることを後回しにしない」こと。「商品と売り上げあってこその企業」であると同時に「社員あってこその企業」でもあり、経営側が「安くない給料を払っているからこれくらいのカスハラなら対応してほしい」という意識を持たないようにしてほしいところです。
相談者さんの中に「社内でパワハラ・セクハラ、お客さんからカスハラのダブルハラスメントに悩まされている」という女性がいました。しかもその女性は「先輩たちのように自分で何とか処理しなければいけない」と耐え続け、疲弊し切った様子で相談しに来たのです。ちなみにその職場には相談窓口のような部署がなく、同僚の手助けも受けられませんでした。
このような人をいかに減らしていけるのか。今こそ行政、企業、顧客となる人々、それぞれの意識が問われているように見えるのです。
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