「カスハラ」法整備でもそう簡単に解決しない事情 「お客様は神様」で生きてきた中高年の壁も
とりわけ現在、サービス業の現場などでカスハラを受けている人々の不満は強烈。「この程度で変わるほど簡単な問題ではない」「現場のひどさを知ろうとしないから罰則を設けない」「酔っている人に『条例違反です』と言っても聞いてもらえるわけがない」などの辛辣な声が見られます。
ではその「簡単な問題ではない」「現場のひどさ」とは、どんなことなのか。
筆者の相談者さんで業種を問わず最も多かったのは、中高年層の顧客に対応する難しさをあげる声。「お客様は神様」「客が上で従業員が下」という関係性をベースに考える傾向が強く、「シルバークレーマー」「シルバーモンスター」などと呼んで恐れている職場も少なくないようです。
「クレームは貴重」の方針も疑問
しかし、中高年層の危うさは顧客側だけでなく、企業の管理職や上層部にも該当しうることも難しさを物語るポイント。上司が部下に「お客様は神様なんだから、大概のことは我慢するのが当然」という考え方を押し付けて苦しめているというケースが少なくありません。
事実、複数の相談者さんが上司から「あらゆる状況でもカスタマーファーストが前提」「どんなクレームでも業績アップのヒントになるから受け流してはいけない」などと言われて苦しんでいることを明かしてくれました。
ただ、その中高年層を単に断罪するのではなく、理解しておきたい背景があります。それは「学生時代から長年さまざまな我慢を強いられ、犠牲になってきた」「だから今の人も、ある程度、我慢し、犠牲になるのは仕方がないこと」という意識。年齢を重ねてから今さら急に意識を変えることは難しく、個人の尊重や自分らしい生き方が推奨されるようになった世の中に対応しづらい様子が見受けられるのです。
高齢化社会が進む中、行政も企業も昭和から続くこの世代の意識にどう訴えかけていくのか。真剣に考えなければいけない時期ではないでしょうか。
もちろんカスハラは中高年層だけの問題ではありません。たとえば、ある飲食店に務める相談者さんは、「カスハラは高所得層に多い」「肩書や収入に自信がある人ほど上から目線で、穏やかな口調でも理不尽なことを言う」などと言っていました。特に「2020年代に入って以降、社内のパワハラやセクハラに配慮しなければいけなくなった分、酔った勢いもあって外部への人当たりが強くなりがちな人が増えた」という声を聞いたことがあります。
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