翻訳でも生成AI台頭?「DeepL」が見いだす勝ち筋 翻訳の「一貫性」で生成AIサービスと差別化

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AIモデルの詳細は公開していないが、DeepLの創業者であるヤロスワフ・クテロフスキーCEOは、翻訳において「技術とモデルと学習トレーニングの間のバランス」こそもっとも重要だと話す。

DeepLのヤロスワフ・クテロフスキーCEO
DeepLの創業者であるヤロスワフ・クテロフスキーCEO。コンピュータサイエンスの博士号を持つ(撮影:今井康一)

DeepL翻訳では、元のソース言語(入力する言語)の中身を正確に理解し、それを翻訳して別の言語に置き換える際に、翻訳そのものの技術と、翻訳された文章をより自然なものにするための技術双方のトレーニングを行う。学習トレーニングでは、出てきた言葉1つひとつを人の目で評価するなど、多大な時間とお金を投資している。この人を介した作業によって高い精度を担保しているのだ。

ただ機械翻訳のビジネスも競争が激化していることは否めない。最新のAIモデルを発表したChatGPTだけでなく、Googleの「Gemini」などの生成AIサービスも、翻訳精度を高めてきているように映る。

勃興する生成AIサービスにどう対抗していくのか。クテロフスキーCEOは、とくにビジネスシーンの機械翻訳において大切なのは「一貫性だ」と強調する。

いつ打っても一字一句、同じ訳語に

一貫性とは、何をいつ打っても、必ず正確な答えが返ってくるということ。例えば、ある英文を入力し日本語に翻訳する際、DeepLではその英文をいつ打っても、一字一句同じ翻訳結果が返ってくる(オプションとして、訳文を数種類提示し、そこから選択することも可能)。

一方でChatGPTなど他社のLLMによる翻訳は、毎回ニュアンスは近いものの、一字一句同じ訳語が出てくるわけではない。

「われわれがAIに期待しているのは、大きな間違いをせず、(打つタイミングによって)全然違う回答をしないこと。AIも人も100%正確ではないし、間違えることもあるが、その偏差がある程度狭くないとビジネスシーンでの活用は難しい」(クテロフスキーCEO)

このような観点から、日本でも生成AIツールとDeepLを用途により使い分けている企業が多いという。

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