翻訳でも生成AI台頭?「DeepL」が見いだす勝ち筋 翻訳の「一貫性」で生成AIサービスと差別化

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今後DeepLが注力するのは、顧客のユースケースをより見極めたサービスの展開だ。

AIツール全般にも言えることだが、ビジネスシーンにおける翻訳ツールの用途はさまざまだ。DeepLも、メールのやり取りの翻訳に使われることもあれば、法務の契約書などフォーマルな文書の作成に活用されることもある。

2023年7月にアジア初の拠点として活動を始めた日本法人の役割は、顧客である日本企業から実際にどのような用途があるかを聞き出し、それをDeepLとしてどう具体的に解決できるかを考える点にあるという。

音声をかけ合わせたサービスの研究も

例えばカスタマーサポートであれば、APIでシステムの中にDeepLの機能をダイレクトに組み込んだほうがいいケースもある。一方で論文を大量に読む研究員などは、自身のパソコン上でDeepLのアプリを立ち上げてpdfを翻訳するほうが使いやすいという人もいる。こうした個々の顧客のユースケースに沿って、サービスの提案・拡充を進めていく方針だ。

AI技術を駆使したサービスの投入が相次ぐ翻訳市場についてクテロフスキーCEOは、「われわれが市場に出たときからGoogle翻訳が存在していたように、すでに競争環境はあった。競争があり続けているという点では今も変わらないし、だからこそ市場が前進する」と淡々と話す。

将来的には、DeepLの品質に音声機能を掛け合わせ、ビデオ通話などでリアルタイムに翻訳するサービスの研究・開発にも力を注ぐ。群雄割拠の機械翻訳ビジネスにおいて、独自のポジション確立を狙うDeepLの挑戦は今後も続きそうだ。

武山 隼大 東洋経済 記者

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たけやま はやた / Hayata Takeyama

岐阜県出身。東京外国語大学国際社会学部モンゴル語専攻卒。在学中に西モンゴル・ホブド大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在ゲーム・玩具業界を担当。

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