ゼロからの文明再興に必要なものとは? 復興のための速攻マニュアル

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中世の農学者は、穀物を連続的に植え続けることで土地が痩せることには気がついていたが、その原因を理解していなかったせいで、回復のためには何も植えずに休ませるほかなかった。これは連続で穀物を育てることで植物栄養素が失われるからだが、マメ科の植物を生産することで回復を促すことができる(この現象を取り入れたのがノーフォークの四輪作法だ)。それを知っているか・いないかだけで食料生産効率が大きく変わってきてしまうのだから、知識こそ正義である。

科学的方法とは何か

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このほかにも本書では医薬品、物質、材料、エネルギー、輸送機関さらには紙の作り方まで、それぞれの分野において重要な技術を凝縮してまとめていく。一つひとつの知識が文明そのものであるのだから、復興のためにはどれも重要なものだ。しかし、それを推し進める為の原理・基盤としての「方法論」も忘れてはならない。仮に科学的な方法論が失われてしまったら、迷信と魔術が蔓延し人々の世界認識は神話の世界に逆戻りしてしまうかもしれない。知識として残すべきもののひとつに、科学的な検証方法があることは間違いがないことだ。

科学的方法とは何かについて、人によって重要視するものの違いもあるだろうがまず重要なのはその実証性だろう。100人が見て100人が納得するような結果を元にすること。棒と、その棒が入るかどうか怪しい穴があったとする。この穴に棒が入ると思うと述べるのが主観であり感想だ。そして穴に棒を実際差し込んでみて入るか入らないかを確かめるのが客観であり実証だ。もちろんことはそう単純ではないにせよ、証拠を基軸とする物の考え方を失わせてはならない。

『アイ・アム・レジェンド』、『マッドマックス』、『ザ・ロード』と映画だけでも文明崩壊後の世界を描いた作品はいくらでも上げられる。それはわれわれのどこかに、今ある世界が崩壊した姿を見てみたいという破滅的な欲望と、たとえそんな状況でも人類は決して諦めず生き抜くことができると信じたい気持ちの両輪があるからではないかとも思う。
本書はその希望の側面に光を当ててくれる一冊だ。

冬木 糸一 HONZ

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1989年生。フィクション、ノンフィクション何でもありのブログ「基本読書」運営中。 根っからのSF好きで雑誌のSFマガジンとSFマガジンcakes版」でreviewを書いています。

 

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