「生涯プログラマー」でやっていくためには? まつもとゆきひろ氏が若手に贈る3つの言葉

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──エンジニアによっては、大きなプロジェクトの一部分だけをやる立場の人も多いです。なかなか想像力を働かせたり、積極的な関わり方をしたりするのが難しい場合もあるのでは?

もちろん立場によるところはあるでしょう。ただ、できないということはない。

受け身で言われた通りにやることを繰り返しているのか、次はこうしようと自発的に動くのか。それが違いを生むんです。

そしてもう一つ、仕事や会社を選ぶ段階で、そういう状況に陥らないよう、自分の裁量が多くなるようにという観点で選ぶというのはすごく重要なことです。

目先の待遇や安定性を求めて大企業を選びがちですが、小さい企業だったら自分の裁量は増える。長い目で見たらそっちの方が得ということもあり得ます。

この業界で働いている人からは、いろいろと辛い話を聞くことはありますよ。ただ、ひと口に「辛い」と言っても、自分の責任のないところで理不尽な理由で辛い思いをするのと、積極的に関わってそれでも辛い経験をするのとでは、意味合いがだいぶ違うのではないでしょうか。若いころから裁量権の多さを自ら求めていくというのは、けっこう重要なことだと思います。

その観点から実践してきた私の処世術は、「何でも言え」というものです。相手が上司であっても、これはダメだと思ったらダメだと若いころから言うことは言ってました。扱いにくい部下だったと思いますよ(笑)。

──誰が言っても許されるものですか? それはまつもとさんに上司に有無を言わさない圧倒的な技術力や仕事の成果があったから成立したのでは?

まあ、言うのはタダですからね(笑)。とはいえ、自分の都合だけで言っているわけではないということを分かってもらうのは大事なことです。

自分の立場からだけ言う一面的なことではなく、上司の立場に立ってみても損にならないなら、声を上げていいということ。自分の都合だけで「こうした方がきれいだから」とか「後々ラクになるから」とか言っても、「でも開発は半年遅れます」では上司の立場で聞けるわけがないですよね?

その積み重ねの末、うるさい奴だけれど意味のないことは言わないと思ってもらえれば、少しずつ自分の裁量は大きくなるのではないでしょうか。

ただ、誰もがその方法でうまくいくと言い切れないのは、私が最初に入ったソフトウエア開発の会社は新卒同期が200人くらいいたものの、大学でコンピュータサイエンスを勉強していたのは私を含めて6人しかいなかったんです。だから知識がある分、尊重してもらえたという側面はあったと思います。

その後2回転職を経験していますが、裁量権、自分の意見を聞いてもらえるかという点はいつも意識していました。他の誰かではなく私が仕事をする意味というのを考えていましたね。

希少価値がある方が値段は高くなる

──仕事を決める上では、他の人の「逆を張る」ことも意識されていたそうですね。

生活の安定を考えたら大企業に勤めた方がいいし、私が就職した20数年前はITの仕事がやりたいと思ったら東京の大企業というのが普通に考えてたどり着く結論でした。

でも東京には住みたくなかったし、さっき言ったような理由で大きい企業も嫌だった。それが結果としてプラスに働いたことはあったかなと思っています。

東京にはたくさん仕事があるからという理由で東京を選ぶ人がいる。他にもよくあるのは、「●●という技術を選ぶと求人が多いから」という理由で取り組む技術を選択するケース。働く地域にしても分野、職種にしてもそういった「多いから」といった理由で選びがちですが、自分ができる仕事は一つだけ。だから一つあればいいんですよ。

希少価値がある方が値段は高くなるわけだから、少ない方がむしろいい。求人数が多いということは他の人もみんなそこへ行くということだから、希少価値はない。そんなに自分を安売りする必要はないでしょう。

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