「生涯プログラマー」でやっていくためには? まつもとゆきひろ氏が若手に贈る3つの言葉

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日々新しい技術は出てきますが、それは計算速度が速くなったとか、ネットワークが太くなったとかいった状況の変化によって、さまざまある技術の中で重要とされるフォーカスが変わってきているだけであって、コンピュータの基本的な原理原則というのはこの50年くらい変わっていません。

だから、コンピュータサイエンスの基礎的な知識を持っていると、最新の技術が出てきても体系の中で理解できるので、非常に効率が良い。惑わされずに済むんです。逆に表面的なことだけを学んでいると、なかなか頭に入ってこないということがあり得ます。

思いつくのはこの3つですね。

精神的な参入障壁は大きくなっている

──では、その3つの力をどうやって身に付け、向上させていったらいいでしょうか? 例えば3つめのコンピュータサイエンスに関する体系的な知識は、コンピュータの発展の歴史を体感してきた上の世代と比べて、デジタルネイティブな若い世代の方が実感を得にくいというところはないですか?

ゲームを例に話すと分かりやすいでしょうか。

私が子供のころのゲームといえばピコピコと動くだけのシンプルなもので、それは今から見ればゲームとしてはすごくつまらないものですが、雑誌に載っている100行程度のプログラムを打ち込んで、よく自分で作ってみたりしていたものです。

対して今の子供たちにとってのゲームは『モンスターハンター』であっても『ファイナルファンタジー』であっても、とても素人には手のでない世界ですから、自分で作ろうとは思わない。僕らの時代のゲームがちょっと頑張れば作れるものだったのと比べて、そのマインドの差は大きいです。

だから精神的な参入障壁は大きくなっているかもしれないですね。そしてだいたいの場合、大き過ぎる夢というのは挫折する。そういう意味では不利かもしれません。

逆に言うと、100行ゲームの面白さに気付いてくれるといいですね。人間、段階を踏まないと成長はしていけません。いきなり雲の上を見ていても「自分ができる」というイメージを強く持てないから、なかなか辛いですよね。

私自身は高校に入る前くらいから小さなプログラムを作っていたし、大学でも研究をしていたので、届かない巨大なものがあったわけではない。そういう意味ではラッキーだった面もあります。

──エンジニアにとって最も大切と言われた想像力に関しては、どうやって育んでいったら良いですか?

経験を積むしかないですね。たくさんプログラムを書いて、たくさんの問題を解決する。幸い、ソフトウエアを開発していると、やれバグが起きた、やれ仕様が変わったと、どんどんと問題が発生します。それを解決する中で、次第に想像力が身に付いていくのではないでしょうか。

ただ、その時の態度として、言われたから直すというのではなく、積極的な関わり方が必要です。

例えば、次に問題が起きないためにはどうすればいいか、お客さんに仕様に不満があると言われたのなら、不満が起きないモノとは何だろうかとか、そういったことを自分で考え、訓練することで身に付くのではないですかね。

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