物流業界で異例の「買収合戦」突入か、佐川も名乗り 丸和の"同意なき買収"は株価高騰で視界不良

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しかし2020年9月、林原氏はハラスメント行為があったとして社長を辞任。綾宏將社長に交代して以降、両社の提携協議は止まってしまったという。「ずっとテーブルについて話をしてきたが、社長が交代した。私が説明に行ったが『丸和さんとやるという気持ちはない』と。だから、わかりましたと引き下がった」(和佐見社長)。

TOBの熱意を語った丸和HDの和佐見社長。トラック1台から会社を立ち上げた業界の有名人だ(撮影:尾形文繁)

しかし物流業界は2024年4月に残業規制が課せられ、主に長距離ドライバーの人手不足が深刻化する「物流2024年問題」への対応に苦慮している。

丸和HDの和佐見社長は単独ではなく、多くの企業で協力してデジタル投資や効率化を進めるべきという考えを持つ。そこで数年越しの構想を打ち切るのではなく、TOBで提案が妥当かどうか、C&F株主に是非を問う形を選んだ。

これまでC&Fは、特別委員会を設置して丸和HDの提案を検討。公開で質問状のやりとりも行ってきた。しかし現在のところ、TOBに対しては意見を「留保」している。複数の対抗提案があり、比較して検討したうえで改めて意見を表明するためだ。

4月には9社から対抗提案の意向表明書を受領し、5月1日までに4社から法的拘束力のある提案書を受領した。その1社がSGHDだったわけだ。

参入障壁の高い低温物流は成長期待

対抗提案が複数寄せられた背景には、低温度帯の物流の成長余地がある。近年、冷凍食品のマーケットは拡大基調だ。ニチレイフーズの推計では、2018年度の5600億円から2023年度は7600億円に拡大する見通しだ。低温物流市場も2022年度は前年度比3.6%増の1兆7724億円(矢野経済研究所調べ)、2025年度には1兆9157億円に拡大する予測だ。

C&Fは冷凍食品の物流を担うヒューテックノオリンと、冷蔵食品を扱う名糖運輸が統合した会社。低温物流にはつねに温度管理を行うための専用設備が必要で、参入障壁は高い。

また、同社は業界では珍しく、自社ドライバーを多く抱える。3月時点でドライバーは4103人だ。正社員は3005人、ほかは契約社員で、正社員化を進めている。トラックも2872台を数える。

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