大正製薬、「安すぎるMBO」批判くすぶる総会の中身 決定過程への質問集中、上原家は終始発言せず
春の嵐のような強風が吹きすさんだ3月18日。東京・豊島区にある大正製薬の本社ホール周辺には、警備員と、10人弱の同社社員が並び、ものものしい雰囲気に包まれていた。
その日開かれたのは、約7100億円を投じてMBO(経営陣による買収)を実施した大正製薬ホールディングス(HD)の臨時株主総会だ。昨年末から今年1月、上原明社長の息子である上原茂副社長が代表を務める大手門株式会社が同社に対してTOB(株式公開買い付け)を実施。オーナー一族の上原家は、従来の保有分と合わせて約73%の株式を取得するに至っていた。
このTOBをめぐっては、1株8620円という買い付け価格に対して、ファンドなど一部の株主から「安すぎる」と問題視する声が上がっていた。TOB発表前営業日の終値に5割超のプレミアムをつけたとはいえ、PBR(株価純資産倍率)ベースでは0.85倍にとどまる価格だったからだ。
現地参加の株主はわずか十数人
法的手段に訴えることを検討する株主も出てくる中、厳戒態勢で迎えた当日。ふたを開けてみると、現地に足を運んだ株主はわずか十数人だった。総会では、株式非公開化に向けた株式併合を進めることなどに関する議案がすべて可決され、4月9日に上場廃止となることが決まった。
総会に参加した40代の男性は、父の代から50年以上、大正製薬の株式を保有していた。「最後くらい社長の声を聞きたい」と会社を休んで埼玉から足を運んだが、総会で明社長がコメントすることはなかったという。
「上場廃止によってオーナーの圧力が強まり、より閉鎖的になるのではないか」。男性はそう懸念を口にした。
国内過去最大とされるMBOに踏み切った大正製薬HDの株主総会は、どう進められたのか。関係者への取材によって見えてきた当日の様子をお届けする。
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