現代アートが1980年代に「変わった」のはなぜか 「ビフォー1980」と「アフター1980」の違いとは

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ボードリヤールがシミュラークルの典型として例示したのがディズニーランドでした。ディズニーランドにあるあらゆるものはすべてフィクションです。何らかの現実から派生したものではありません。

にもかかわらず、ディズニーランドは確固として存在し、それどころか、「夢のある世界とはどういうものか」とか「冒険や友情とはどういうものか」などを訪れた人々=リアルな人々に伝え、人々はそれに感動し納得しています。

アフター1980の幕開けにふさわしいアート

つまり、ディズニーランドで起こっていることは「コピーがオリジナルを規定する」という逆転現象で、真実性と虚構性が倒錯した関係になっているのです(ことわざ的にいえば、まさに「嘘から出たまこと」です)。

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それは「誰でもあって、誰でもない」という真実性と虚構性が交錯し、虚構性が幅を利かせたシャーマンの《アンタイトルド・フィルム・スチル》にも通じるもので、シャーマンのアートはシミュレーショニズムと呼ばれるようになります。

シミュレーショニズムは、それまでのアートが作品の唯一絶対性や真実性を根拠としてきたことに対する問い直しを迫り、コピーや模倣、盗用といった手法による作品の可能性をさまざまに提示し、アートのイデオロギーの根本的な見直しを迫りました。と同時に、いまから振り返れば、シミュレーショニズムはまさにアフター1980の幕開けにふさわしいアートのかたちでした。

藤田 令伊 鑑賞ファシリテーター

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ふじたれい / Rei Fujita

早稲田大学オープンカレッジ講師、合同会社プラスリラックス共同代表。
知識としての「美術」にとどまらず、見る体験としての「美術鑑賞」が鑑賞者をどう育てるかに注目し、楽しみながら人としても成長できる鑑賞のあり方を探っている。主な著書に『現代アート、超入門!』『アート鑑賞、超入門!』(ともに集英社)、『企画展がなくても楽しめるすごい美術館』(ベストセラーズ)などがある。

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