愛猫を失った男性の「ネコは外が幸せ」という誤解 「快適な縄張り」さえあれば室内でも十分に満足

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そもそも、ネコという動物の生態として、彼らは生きるのに広大な空間を必要としていません。

人家の中にかぎられていても、快適な縄張りがあればネコは十分に満足できるのです。強いて挙げるなら、キャットタワーのような上下運動ができる器具を用意してあげられるといいでしょうね。

それまで元気にしていた外飼いのネコが急死しても、一般的な動物病院などでは外見上の判断のみで「老衰です」「心不全です」といったように、簡単に片付けてしまわれがちです。

金属や石などの誤飲はレントゲンで診断できることもありますが、中毒や感染症となると遺体の病理解剖まで行わなければ、まず原因は特定できませんし、病理解剖までして原因が特定できないことも往々にしてあります。

今後は外飼いをやめます

茶トラのネコの遺体を持ち込まれた飼い主さんは、ネコをもう1匹飼っておられました。病理解剖の後、飼い主さんに「この子はおそらく、外で毒物を摂取して亡くなったのでしょう」という診断結果を伝え、外飼いの弊害をお教えしました。

ぼくの説明を聞いた飼い主さんは後悔している様子で、「今後は外飼いをやめます。もう1匹の子は、完全に家の中で飼います」とおっしゃってくれました。ネコの飼い方としては、それがベターです。

家族同然にしていた愛猫を失った飼い主さんたちは、多くの方が取り乱しながら「とにかくこの子が急に死んでしまった理由を知りたい」とぼくに依頼されてきます。取り返しのつかないことが起きてしまった後、みな一様に深く後悔されています。

動物の遺体を解剖する獣医病理医のぼくにできるのは、可能なかぎり亡くなった子の死因を特定すること、そして、その子に何が起きたかを飼い主さんに説明し、死から学ぶ機会をご提供することだけです。

前編(飼い主が切望「泡を吹いて死んだ」愛猫の死の真相)は、こちらからお読みいただけます。
中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家

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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura

1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。

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大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者

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おおたに ともみち / Tomomichi Ohtani

1982年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。同大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻修士課程修了。同博士課程中退。出版社勤務を経て2015年2月にスタジオ大四畳半を設立し、現在に至る。農学・生命科学・理科教育・食などの分野の難解な事柄をわかりやすく伝えるサイエンスライターとして活動。主に書籍の企画・執筆・編集を行っている。著書に『増補版寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(講談社)、『眠れなくなるほどキモい生き物』(集英社インターナショナル)、『ウシのげっぷを退治しろ』(旬報社)など。

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