さらに、近年、国内で大きな問題となっているのが、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という病気です。最近しばしばニュースになっていますから、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
この病気は、ウイルスを持ったマダニにかまれたり感染した動物の体液に接触したりすることで、ほかの動物にも感染します。
マダニは野山や草むら、ヤブ、野生動物の体表などにいますから、ネコを外に出せば、ウイルスを抱えたマダニにかまれてSFTSに感染したり、マダニを体にくっつけて家に持って帰ってきたりするかもしれません。
SFTSは致命率が高く、発症するとネコでは約70パーセント、イヌでは約29パーセントが死亡するという報告があります。SFTSを発症した動物の体液を介して、その飼い主や獣医療関係者に感染したケースも報告されています。
直接マダニにかまれて発症したケースと合わせると、日本で2014年から2016年までに178名の感染者が出て、実にそのうち35名もの方が亡くなっています。医療技術の発達した現代において、人間で約20パーセントの致命率というのは相当なものです。
ネコの外飼いの弊害はほかにも
ネコの外飼いの弊害は、これらの感染症だけではありません。
外をうろつくネコは、深夜の鳴き声による騒音問題、まき散らすふん尿や残飯による人間の住空間の汚染などを引き起こします。
また、ネコは食物連鎖の上位動物ですから、外を出歩けば小動物や野鳥などに傷を負わせたり捕食したりすることがあります。野良ネコが、ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなどの希少動物を捕食し、それらの種の存続を脅かしているという報告があります。生物多様性保全の観点からも、やはりネコの外飼いはおすすめできません。
いかがでしょうか。
ネコの外飼いが当のネコだけでなく、人間や自然環境にも悪い影響を与えることがおわかりいただけたと思います。
これらの問題を予防する一番の方法は、ネコは室内飼いを原則とし、それを徹底することです。
「家に閉じ込めておくなんてかわいそう」と思われる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。だからといって外に出せば、ロードキルや感染症などで、ネコが寿命をまっとうできずに死ぬ可能性を高めます。そちらのほうがかわいそうではありませんか?