だからこそ、サイゼリヤはほかの店の値段や味を評価するときのベンチマークとして使われるようになってきました。「ミラノ風ドリアが何皿食べられるか」という「ミラノ風ドリア指数」のようなポジションを獲得したわけです。
それだけ知名度が上がってきたサイゼリヤですが、いわゆるマーケティング的なことはほとんどやっていません。広告すら出していないのです。
広告費を売上の5〜8%かけるのがチェーンストアの相場とされているのですが、サイゼリヤにはそれがない。サイゼリヤといえば「安いレストランの代名詞」で、お店で出している価格そのものが広告になっているからです。
広告を出さずに浮いた分のお金は、原価に組み込まれています。つまり、原価率を他社より5〜8%高くしても問題ないということです。広告に回すお金があったら、少しでもいい食材を使って、お客さまに還元する。価格と商品力でお客さまに訴求していくという考え方がベースにあります。
そのため、近くにサイゼリヤのお店があることが何よりも重要です。お店に来てもらわなければ、サイゼリヤのことを知ってもらう機会がないからです。
でも最近は、近所にサイゼリヤが出店すると、私たちが何もしなくても、地元で話題にしてくれる流れができました。ユーチューブの動画などで、サポーターのみなさんがサイゼリヤを取り上げてくれて、サイゼリヤの存在が知れ渡っているから、ということもありそうです。
ユーザー体験はお客さま自身がつくるもの
サイゼリヤの使い方は人それぞれです。お店に来てもらえばわかりますが、サイゼリヤの利用者層は実に多様です。
遅いランチから夕方までのアイドルタイムには、高校生や子連れの主婦らがお茶をしながら会話を楽しんでいます。平日の開店直後はおじいちゃん、おばあちゃんがやってきて、ワインを飲んだりしている。
ディナータイムは、サラリーマンの飲み会もあれば、一人きりで楽しむボッチ飲みのお客さんもたくさんいます。おじさんたちがワインを飲んでいる横で、子どもたちが駆け回ったりしています。
それが違和感なく混在しているのがサイゼリヤなのです。
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