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上司の気難しい表情すら管理する社会の結末 Z世代の不快を消す「デオドラント化」の限界

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  • 舟津 昌平 経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師
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「退職代行」に違和感をもつ方も少なくないだろう。そんなことも自分でやれないのか、とか、そんな精神で次の会社でうまくやれるのか、など。ただ現代では、「価値観の変容」に異議を唱えるのが間違いなく難しくなっている。

みな歴史を忘れ、新しく生まれたもののほうが正しくて、旧い立場から発言しようものなら即座に「老害」だと(とても嫌な言葉だ)、認定されてしまう。

上司は存在がマイクロアグレッション

マイクロアグレッション(微細な加害)という概念がある。アメリカ発の概念で、「無意識な差別」などの言葉と紐づく。ブラジル出身のサッカー少年に「やっぱりブラジル人はサッカーうまいね」とか、インドの方に「毎日カレーを食べるのですか」と訊くことなどが当てはまる。一方的なステレオタイプを基に決めつけるわけだ。

呆れて笑って「いやいやそんなわけ」と返せる方もいるかもしれないけれども、言われたほうにとっては自身のアイデンティティを深く傷つけられる原因にもなりうる。この手の話には、ますます繊細になっておくに越したことはない。

そして、職場の上司である。上司というのは絶対的に権力を有していて、だから怖い。威圧的である。人事権や評価を握っていることすらある。とんでもないストレス要因だ。そんな上司が嫌そうな顔をしている。不機嫌だ。自分に向けたものだろうか……。そうした不安に襲われると、仕事どころではなくなっていくだろう。

いつも上から目線で、権力を利用して、能力を、性別を、年齢を、貶めてくる。上司は存在からしてマイクロアグレッションの塊であるわけだ。

ただ、マイクロアグレッションをめぐる言説に、一つだけ指摘しておきたい。自らマイクロ(微細)と表現しているところだ。微細だからやっていい、とは断じて言わない(こういうことはしつこいくらい丁寧に言っておくべきことだ)。それは理屈が通らない。

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【罪と罰のアンバランス】

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