「ドローン急襲」想定しない日本のヤバい防衛体制 「いずも」上空から撮影ができてしまう事情

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コスト削減のためにレーザー測距儀や自動追尾装置を外したというが、そのくせ高い国産機銃を採用している。平成30年度に海自は調達単価660万円で2丁の12.7ミリ機銃を調達している。アメリカ軍調達単価は約1400ドルである。国産品の単価はその4.4倍以上である。輸入コストがかかっても160万円程度、悪くても国産の半額以下程度だろう。まとめ買いをすればコストはさらに下がるはずであり、1丁あたり450万円、実に6割程度のコスト削減が可能になるはずだ。なぜそれをやらないのだろうか。陸自は12.7ミリ機銃の調達を国産から輸入に切り替えている。

トルコのアセルサン社が開発した海軍用RWS,MILAS。トルコでは各社で20種類以上のRWSが開発されている(写真:筆者撮影)

他国の海軍では機銃と中口径機関砲を搭載したRWSを併用するケースも少なくない。中口径機関砲はより射程距離が長く、また電子信管を採用していれば目標付近で爆発させて破片を拡散させることによって、命中しなくても目標を無力化できる。またRWSだけではなく、発射速度の高いガトリングガンを含めた、12.7ミリ、7.62ミリ機銃などを複数搭載して死角をなくす努力をしている。

5年間で従来の約2倍の防衛費を使うことになるが…

自衛隊は諸外国よりも火力により攻撃を躊躇う傾向が強い。そうであれば近接戦闘の相手の射撃を困難にする音響兵器やストロボ機能がついたサーチライトなどのノンリーサルウエポンの搭載も検討すべきだったのではないだろうか。一定間隔で点滅するサーチライトは操縦者や射手の照準を妨害するだけでなく、音響兵器同様に三半規管を刺激して気分を悪くさせる効果もある。

これは大戦中にスイス軍がドイツ空軍の急降下爆撃機に対する対策として開発された技術で、歩兵用のタクティカルライトにも多く採用されている。イスラエルでは暴徒鎮圧用のノンリーサル型RWSにこれらの技術が採用搭載されている。

また電波の周波数帯の問題が解決する見込みが当分ないならば英国のスカイウォール社などのドローンをネットで捕獲するグレネードを発射するランチャーのシステムなど物理的な方法で捕獲、撃墜する手段もあり、これらを導入を検討するべきだろう。

スカイウォール社のスカイウォール・オート。ドイツのG7サミットでも使用された(写真:筆者撮影)

政府はオーストラリアの次期水上艦艇にもがみ級をベースにした新型艦を提案するとされているが、現代の水上戦闘艦に不可欠な近接防御を無視してRWSすらマトモに使えない「海軍」の設計思想や実力を疑われるのではないだろうか。

わが国はこの5年間で従来の約2倍の防衛費を使うことになっている。だが果たしてそれが有効に使われているのだろうか。少々の費用や本来必要な手間を省いて、高価な護衛艦隊が停泊地で全滅するようでは防衛費の有用な使い方とはいえないだろう。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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