「ドローン急襲」想定しない日本のヤバい防衛体制 「いずも」上空から撮影ができてしまう事情

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ドローンの導入や対ドローン用の妨害、迎撃システムの導入が遅れているもうひとつの原因は防衛省、自衛隊に割り当てられている電波の周波数帯が軍用の通信に適していないからだ。いわゆる防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)でも周波数帯の見直しは謳われているが手つかずだ。筆者は過去歴代の防衛大臣に会見でこの件を質問し、また昨年担当部署である整備計画局情報通信課に取材したが現状運用はまったく問題ないとの見解だった。

高い値段で低性能に改造する日本

しかし実態は違う。他国では開発、実用化されている対ドローン用ジャマーなどの多くは自衛隊の周波数帯では使えないので輸入して使用できない。また無人機にしても本来長距離での運用に必要な海外で使用されている5.8〜2.4GHzの範囲の周波数帯が使用できない。陸自が採用したボーイング社のスキャンイーグルも仕様を5GHzから2.4GHzに変更されている。このため性能は大幅に落ちている。わざわざ金をかけて、高い値段で低性能に改造して採用している。

慶応大学SFC研究所の部谷直亮上席研究員がWedge2023年3月号に寄稿した「『有事』に無力な日本の電波法ドローン活用に必要な覚悟」では以下のように述べている

「米軍が運用する米国製ドローン『Skydio2+』の通信距離は最大6キロメートルとされるが、これを日本の電波法に適合した形で運用するとたった300メートル程度しか飛行できなくなってしまう」。また対ドローン機材を扱う企業の社長の言葉として「電波法の出力規制によって、対ドローン機材の有効射程距離は100メートル程度にまで低下する」

他国ではすでに港湾のパトロールや防御用に武装した無人艦艇を導入している国もあるが、海自にはそのような装備はない。仮に導入しても前記のような周波数帯の問題で能力は低くなるだろう。

周波数帯の変更は、一円も掛けずに飛躍的に防衛力を強化できる。電波の管理は総務省であり、これは政治を巻き込む利権の温床だ。だから手を付けにくいのは理解できるが、それをやらずにドローン導入やネットワーク化を勧めても機能しないガラクタを買って終わることになる。政策官庁である防衛省は本来全力でこれに取り組むべきだ。またこのような政治を巻き込み複数の省庁にまたがる懸案事項は本来NSS(国家安全保障局)が積極的に関与すべき案件であるが、そのような動きは見られない。

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