「ドローン急襲」想定しない日本のヤバい防衛体制 「いずも」上空から撮影ができてしまう事情

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海上自衛隊では拠点だけでなく、護衛艦などの水上艦艇のドローン含めて近接防御に対する危機感が欠如している。先述のように「堂々たる艦隊決戦」以外は戦いでないと思っている節がある。護衛艦などの水上艦艇にも外洋に出れば電波法の規制なしに使えるのだが、対ドローン用のジャマーなどは搭載されていない。

ドローンに対処するRWSの導入も進まない

さらにRWS(リモート・ウェポン・ステーション)の導入も進んでいない。RWSとは元来装甲車用に開発された機材で機銃など小火器に暗視装置、ビデオカメラ、レーザー測距儀などを統合したもので、車内にいながら周囲を監視し、射撃できるシステムだ。また安定化装置や自動追尾装置が搭載されていれば走行中に移動する目標も射撃が可能となる。

25ミリ機関砲を採用したタイフーンRWS(写真提供:ラファール)

2000年にアメリカ海軍のUSSコールが自爆ボートに襲撃された事件をきっかけに軍艦用に海軍型が開発され、各国海軍が急速に採用してきた。これは高速艇など水上の脅威だけではなく、ドローンに対処することが可能だからだ。

2001年12月22日に海自は海上保安庁とともに北朝鮮不審船追撃という「実戦」も経験している。また2009年3月13日、我が国はソマリア沖・アデン湾における海賊行為対処のための海上警備行動を発令し、翌3月14日、海上自衛隊の護衛艦2隻をソマリアに向けて出航させ、以後も海賊対処の派遣は続いている。このような近接戦闘の重要性を痛感すべき「実戦」を経験しているのにその備えに極めて鈍感である。

だが海自のRWSの導入は遅かった。海自がRWSの導入を始めたのは2019年、RWSはもがみ級FFM(多目的フリゲート)および、あさひ級DD(汎用護衛艦)二番艦のしらぬいへの搭載からである。これは日本製鋼所が開発した国産RWSで12.7ミリ機銃を搭載しており「水上艦艇用機関銃架(遠隔操作型)」と呼称されている。

技本の開発したRWS。主契約社は日本製鋼所(写真:筆者撮影)

このRWSは平成21~23年度までに技術研究本部(現防衛装備庁)が日本製鋼所を主契約者として陸上自衛隊の車輌搭載用として12億円をかけて研究試作されたものをベースにしているが、陸自は採用しておらず、昨年度から導入が始まった次期装輪装甲車にはコングスバーグ社のプロテクターを選定している。

今後建造されるイージスシステム搭載艦には中口径のRWSが搭載される予定である。だが既存の護衛艦やそのほかの艦艇に搭載される気配はない。この5年で43兆円という潤沢な防衛費が手当てされていても、だ。

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