日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?

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結果的に期待は実現しない。理論的には、上述の合理的期待形成ではなく、適合的期待形成となるということだ。

実物経済と金融資産市場との間に起きる「深刻な問題」

一方、資産市場においては、将来の期待の変化の修正が行動に大きく影響する。なぜなら、それは資産価値のほとんどが将来のものであり、かつ資産の多くが金融資産であるからだ。つまり、金融資産市場においては、期待は実現する。

例えば、株が上がると思えば、買う。買うから上がる。上がるから買う。ほかの投資家もそう行動するだろうと予想するから、みんなが買って大幅に上がる前に買う。われ先にと買う。だからあっという間に上がる。

むしろ、金融資産市場においては、期待が実現しすぎて、オーバーシュートする(行きすぎる)おそれがある。資産市場においては価格がほぼすべてであり、その価格の変化が瞬時に起こるため、期待が実現すると投資家たちは確証を得ることができる。行動経済学でいうところの確証バイアスが現実に存在することを鑑みれば、この行動はさらに加速するからだ。つまり、期待が実現し、期待が期待を呼ぶため、すぐにバブルになってしまうのだ。

この結果、金融資産市場においては、変化はあっという間に実現する。実物経済(あるいは実体経済)との、変化が実現するスピードの差は、とてつもなく大きくなる。

そして、この差が問題で、経済に決定的な影響をもたらす。

金融市場は、実体経済が変化する前に変化してしまう。そして、この変化のスピードが21世紀になってさらに加速しているのだ。この結果、実体経済が中心で、それをサポートする金融市場という本来のあり方から、金融市場の変化が実体経済を振り回し変動させるという状況が定着してしまっている。これが新しい世界だ。

それにもかかわらず、日銀は(アメリカの中央銀行も)まだ20世紀の経済世界に生きているから、この変化の加速を無視し、実体経済の変化を中心に観察している。この結果、中央銀行が、実体経済の物価だけを注視し、実体経済を調整しようとしても、金融市場を直接にコントロールの対象に入れなくては、うまくいかないことになる。金融市場における最も重要な価格である為替をコントロールの対象外にしていては、経済運営はうまくいかないのだ。これが第2の理由である。

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