一方、21世紀は格差拡大が加速すると同時に、金融資産市場の規模が実体経済に比して急速に拡大しているという現実がある。
新しい現実を直視しない中央銀行
このような状況において、金融政策における大規模緩和の影響はどこに行くか。もちろん、金融市場である。インフレを起こそうとして金融緩和をすれば、実物経済は動かず、金融資産市場だけがバブルになる。
このバブルにより、富裕層と呼ばれる新成金資産家たちがぜいたく消費を増やすが、それは広がりを持つはずがない。住宅・土地価格は上昇し、庶民は家が買えなくなるし、高額品、レジャー品は金持ちの独占状態になる。
彼らのぜいたく消費に企業もターゲットを絞るが、こうした新富裕層は、新製品、画期的なモノ、流行モノなどに夢中になるから、物価指数は上がらない。なぜなら、物価指数に組み入れられないモノだけが高いからだ。例えばトヨタ自動車のレクサスハイブリッドから、テスラに乗り換えたときに、物価指数は上がらない。
レクサスハイブリッドがテスラに対抗するには、レクサスも全面的にEV(電気自動車)に変更するか、ハイブリッドの値下げあるいはサービスや質の向上で対抗するから、むしろ物価指数は下がる可能性すらある。
資産市場の影響を受ける物価指数は、住宅部分だけだ。だから近年、物価水準の動向は、世界的に住宅価格の影響が大きくなっているのだ。この結果、金融政策の影響はほとんど資産市場に吸収され、実体経済への影響は資産市場経由のものがほとんどであり、二次的なものであるから小さいうえに資産市場の変動には大きく及ばない。そして、景気が過熱しても、物価はそれほど上がらないことになる。
これが新しい現実である。この新しい世界を中央銀行、エコノミスト、経済学者たちは見ようとしていない。この結果、21世紀はバブルにあふれるようになったのである。
物価と実体経済だけを見ていては、バブルは止められないし、結果的に実体経済運営もうまくいかない。物価だけを見ていると、資産市場がバブルになり、実体経済が過熱し、その後、少しだけ物価が上昇し始めたときになってようやく金融政策を調節し始めるから、バブルの影響は悲惨なことになるのである。
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