大谷の"番記者"が語る「ドジャース移籍」の狂騒 「予期しない道を選ぶ」大谷ゆえの混乱と納得

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サム でも大谷はこの6年間、絶対にこんなふうには補強しない球団にいた。彼は勝利に飢えている。ほかのことはどうでもいいんだと思う。

適切な例かは分からないけど、元首相の安倍晋三が銃撃された時に、大谷にそのことは質問しないように言われたのを覚えている。彼は野球以外で起きていることから自らを遮断しようとしているんだと思う。

ディラン それはそうだね。サッカーのワールドカップで日本代表のキャプテンを務めた吉田麻也が、ロサンゼルス・ギャラクシーに移籍して、エンゼルスの試合で始球式を務めた時、大谷の側を通りすぎても、大谷は見向きもしなかった。

別に無視したんじゃないと思う。単に吉田が誰なのか、よく知らなかっただけなんだと思う。

「変わったなと思うよ」

サム 彼の世界には野球しかないんだろうね。大企業や政治がどうたらこうたらとか、自分の懐事情にとってどちらが正しいかなんてことは全く気にしていない。今回の移籍でどれくらいのお金を稼ぐかってことも。

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いずれにせよ、大谷はこれからの10年で勝ち続けるのに最適な契約内容にした。(経営のトップにいる)アンドリュー・フリードマン(編成本部長)とマーク・ウォルター(オーナー)がいなくなった場合は、自分から契約を破棄できる条件を盛り込んだことからも明らか。

それと、大谷を取り巻く状況も、エンゼルスにいた時とは一気に変わった。ラムズ(ロサンゼルスを本拠地にするNFLチーム)の試合を観戦したり、ロサンゼルスの寿司屋に行った写真が出回ったり。

ロサンゼルスという大都市のスーパースターになったことを受け入れたかのよう。7億ドルという契約を結んだことの意味を理解しているのかもしれない。

エンゼルスにいた時は、自宅と球場の往復だけで、公の場に姿をほとんど見せなかった。変わったなと思うよ。

志村 朋哉 在米ジャーナリスト

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しむら・ともや / TOMOYA SHIMURA

1982年生まれ。国際基督教大学卒。テネシー大学スポーツ学修士課程修了。英語と日本語の両方で記事を書く数少ないジャーナリスト。米地方紙オレンジ・カウンティ・レジスターとデイリープレスで10年間働き、現地の調査報道賞も受賞した。大谷翔平のメジャーリーグ移籍後は、米メディアで唯一の大谷担当記者を務めていた。

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