超一流のビール売り子は「戦略の基本」が違う おのののかさんが語る「楽しむこと」の大切さ
「上司だろうとお客さんだろうと、こっちから壁を壊して近づいていければ、素直さを分かってくれるんじゃないかな。多少言いたいことを正直に言っても聞いてくれる大人って多いと思うんです。だから、まずは“何となく”の壁を取り払ってみる。で、自分がこの場を楽しくしようとしてみる。そういう楽観的っぽい動きもれっきとした武器だと思いますね」
売り子を通して学んだ「楽しむこと」の大切さ
なぜ、ののかさんは「楽しむこと」が武器になると考えるのか。
それは、彼女自身がビールの売り子として、「楽しむこと」が営業活動に良い影響を与えることを体感してきたからである。
「私の接客を気に入ってくれて『じゃあ、買おう』って思ってもらえるんだから、やっぱりウキウキしてきますよね。実際、売れると嬉しいし、楽しいんです。もちろん、いいことばかりではなくて、イヤなことを言われることもあります。でも喜んでくれるお客さんのおかげで、笑顔でいられる時間の方が多いし、お客さんにしてみても、やっぱりニコニコしている売り子から買いたいじゃないですか。結果としてまた売れて……みたいな良い循環があって、気持ち良かったんですよね」
笑顔のパワーやリアクションが大切だということ。そして、上手に自己主張すれば嫌がられるよりもむしろ覚えてもらえ、さらに仕事が楽しくなるということ。これら、人と関わる仕事をする上で持っておくべき営業ノウハウといえるものをたくさん学んだという。
「キツイかキツくないかといったら、キツイ仕事だと思います。15kgのビール樽を背負って客席を上り下りするんですから。売れない子は中身が減らないからずっと軽くならない。売れなくて辞めちゃう子だってかなりいました。でも、売ってる子はみんなニコニコしていましたよ。売るための笑顔というだけじゃなくて、売り子という仕事を楽しんでいたからだと思うんです」
「楽しむこと」を実際に武器にしていたというののかさん。しかし、それだけではもちろんトップにはなれない。
「スタジアムの上から下まで降りていく時、お客さんが飲んでいるカップを常にチェックしていました。ビールが残り少なくなっているお客さんなら、すぐにでも『もう1杯』注文してくれる可能性が高いんです。そういう人がスタンドのどのあたりにどれくらいいるのかを、目で見て覚え、いつごろのタイミングでどこに行けば売れるかを判断しながら移動していました」