本人に「この経歴って本当ですか?」と直接問い詰めても、正直に答えるわけがない。まずはアメリカ超名門校卒の真相をつかむため、「卒業証明書の実物を見せてほしい」と依頼した。
Aさんは数日後に、証明書を提出。だが、どうも怪しい臭いを感じた私は、本人の了承を取りつけて、大学側に在籍確認を行った。すると、「卒業生にそんな人物は存在しない」とキッパリ。悪い予感は的中してしまった。
すでにこの時点で「黒」と判定できたが、念のため前職の人事部にも問い合わせると、案の定、在籍の記録はないという。これらの事実をAさんに突きつけると、いよいよ観念し、経歴詐称をしていたことを認めた。
履歴書や職務経歴書に書き連ねていた、華麗なる学歴や経歴はすべて嘘。大学の卒業証明書は、本人が偽造したものだと判明した。
まだ試用期間中だったAさんは、即日解雇となった。その後、本国に帰ったのかどうか消息は定かではない。
経歴について問われ「まさかの」逃走
私自身、経歴詐称の事案は初めてだったゆえ、少々面食らった。こんな大っぴらな嘘が、一部上場企業の採用現場でまかり通るなんて、信じがたい。
そこで知り合いの人材エージェントや他社の人事に聞いてみると、意外にも「経歴詐称されるケースは少なくない」というのだ。
あるエージェントの担当者は、紹介した女性Bさん(30代後半)が経歴詐称をして大変な目に遭ったと教えてくれた。
有名私立大卒で数々の大企業で実績を上げていたBさん。面接での受け答えもしっかりとしており、企業から即オファーが来て入社に至った。
だが、実際はまったくもって仕事ができなかった。
実力を期待して新規プロジェクトのリーダーを任せたものの、一向に仕事が進まない。それどころか、指示したことさえも満足にできなかった。
「これはさすがにおかしい」と感じた直属の上司が本人に経歴の真偽について問うたところ、突然、自分の荷物を持って逃げ出したのだ。
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