部屋探しの「不動産ポータル」が役割を終える日 生成AIの活用が加速、「AI不動産」の現実味

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これまで見てきたように、①~⑥の機能を搭載した「AI不動産」は近い将来に実現可能になりつつあるが、これを不動産業界がどのように使いこなしたらいいのか。一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部の清水千弘教授は、不動産事業の業務フローをタスク(仕事)ごとに分解したうえで、AIとの分業をどのように行うかが重要だという。

最も時間コストのかかる「集客」にAI活用

宅建業者の業務フローをタスクごとに分解すると、「売り主側」をサポートする業務では、不動産の売り主を見つけ出す「集客」から価格査定、媒介契約締結までの「受注活動」、買い主をマッチングして売却条件を合意するまでの「売却営業活動」、重要事項説明書を作成し、契約・決済までの「契約・引き渡し(エスクロー)業務」、引き渡し後の「アフターフォロー」まで含めると29工程となる。「買い主側」をサポートする場合でも20工程のタスクを行っている。

清水教授の研究によると、最も時間コストを要しているのが売り主側、買い主側ともに「集客」であり、これまで宅建業者は、チラシをポスティングしたり、広告料を払って不動産ポータルサイトに広告を掲載してきた。「AI不動産」が実現し、不動産ポータルサイトなどに広告料を支払うよりも、安く、かつ効率的に集客できるのであれば、宅建業者としてもAIを活用するメリットが出てくる。今後、不動産業界でも人手不足が深刻化することも想定されるので、タスクごとにAI活用のメリットを検証しながら導入を進めていく必要が出てくるだろう。

電子情報技術産業協会(JEITA)が今年3月に発表した日米デジタル経営調査によると、生成AIの活用状況についてアメリカ企業では6割以上がすでに利用中または開発・試験利用中だったが、日本企業では2割にとどまり、「聞いたことがない/あまりよく知らない」が3割を超えていた。調査時期は昨年の10〜11月で、それから半年近くが経過したので、日本企業でも生成AIを知らないという経営者はいないだろう。

「AI革命は完全にモードが変わった。すごいスピードで事態が進みだしている」(松尾・東大大学院教授)。今後はAIを活用してDXをどう進めるのか。不動産業界も本腰を入れて取り組む必要があるだろう。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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