だが、その中には小さな子どもや若い母親、そして、その親子を見守る年配の人々が存在し、優しさと温もりが漂っている。
無機質な鉄とチベットの女性たちが、絶妙な調和を見せ、異国情緒を一層際立たせていた。
トイレがなく、森の中で用をたす
1時間ほど進んだところで、10分間のトイレ休憩があった。ダバと呼ばれる小さな食堂でバスを降りる。
しかし、探してもトイレはない。北インドの長距離バスではよくあるのだが、トイレがなく、森の中で用をたすのだ。
大便をするときは、ペットボトルの水を使い、左手でお尻を洗う。初めは戸惑ったが、インド縦断の長旅で、その技はすでに体得済みだ。
すると、随分と時間が経ってから、カナさんが険しい表情を見せ、こちらに戻ってきた。
「遅かったね」
「ここ、砂漠地帯だから、隠れる木がないんですよね。ダバの窓から視線を感じたんで、死角を探していたんですけど、ないんですよ。女性用に”ついたて”か何か用意してくれればいいのに」
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら