「SASUKE」が世界の視線を集める意外な理由 そこにあるのは日本的価値観だ
『Ninja Warrior』は、2006年10月から全米ケーブル局G4(ジーフォー)で、深夜0時からの30分番組としてレギュラー放送を開始する。他番組と一線を画したことから、逆に深夜族の話題を呼びカルト的人気を獲得した。
「日本的価値観」を保ったことが独自性につながった
「勝者」を生まないという特異性も、日本以外の地域に住む欧米などの人々が通常考える「人対人」の勝負ではなく、「人対障害コース」の勝負であることが理解され始め、己を鍛錬し障害を乗り越え、限界に挑む姿が共感を呼び始めた。海外の番組では、相手の失敗や脱落を喜ぶ風潮すらある中で、SASUKEの出場者は、選手同士が励まし合い、たとえ途中で自身が脱落しても他者を応援する姿に、「勝者」がいなくても後味が決して悪くない、むしろある種の爽快感さえ感じることが、海外でも理解され始めた。
翌年4月には早くも同局のG(ゴールデン)帯に昇格、以降は、2007年11月のG帯4時間特番で、18~34歳男性層視聴率で前年同時間比313%をたたき出すなど、同局の視聴率記録を次々と塗り替えた。そして、年を追うごとに人気が拡大、同局の看板番組のひとつに成長した。『Ninja Warrior』制作の際に、海外配給権も獲得していたことから、2007年にはイギリス、2010年には中東と、米国で人気に火がついた同番組は、徐々に世界に拡散していく。
米国で『Ninja Warrior』の人気が高まり、現地人による現地版が制作されるようになると、「日本人は3人も完全制覇者がいるのに、米国人はまだひとりもいない」を触れ込みにして、米国人の負けず嫌いに火を付けた。ちなみに、海外各国版で「完全制覇」を達成した者はまだいない。
もともと、世界流通に適したテレビコンテンツの条件を満たしていなかったことは、かえってSASUKEの個性を殺さずに、その独自性を際立たせた。すべてに通用するワケではなく、結果論かもしれないが、あえておもねらず日本的価値観を貫いたことが海外にも理解され、世界の常識を打ち破ったといえるのかもしれない。
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