「SASUKE」が世界の視線を集める意外な理由 そこにあるのは日本的価値観だ
一方、これらの条件すべてに当時のSASUKEは当てはまらなかった。
・1話あたりの尺が120分以上
・1話あたりの尺がバラバラ(120~最大240分)
・制作に手間がかかり困難
・定期制作しづらい(TBSはそれまで不定期に平均年2話)
・制作規模が大きく制作費が高い
さらにSASUKEには、諸外国の一般的なフォーマット番組とは大きく異なる要素がほかにもあった。それは、必ずしも「勝者」を生まない番組であるという点だ。SASUKEはこれまで延べ3000人が挑戦したが、全4ステージを攻略(いわゆる「完全制覇」)した選手はわずかに3人しかいない。むしろ「勝者」を生まないことのほうが圧倒的に多い。
諸外国のフォーマット番組は、クイズであれ、サバイバルであれ、恋愛やゲームであれ、最後に必ず「勝者」を生み出す。「勝者」のないエンディングは後味も悪いしありえないと、当初、海外の人達にはまったく理解されなかった。
アニメ以外では稀なチャレンジングな試み
海外流通に必要な重要案件が、これだけ整わないコンテンツも珍しく、当然、長らく販売は実現しなかった。販売を継続すればするほど支出だけが増える。単体で見れば当然累積赤字が増える一方で、会社としてもこれ以上は困難として、販売断念せざるをえない、つまりお蔵入りの瀬戸際に追い込まれていた。
そんな中、ようやく2004年に台湾と香港への完パケ販売が成立、翌年現地での放送が実現したことにより収入が得られ、しばらく販売活動が継続可能になった。そして2006年、米国のケーブル局との契約が成立する。
全米ケーブルとはいえ、当初は深夜枠の実験番組。アニメ番組が米国でレギュラー放送されたことはあったが、海外の(特に日本の)実写番組が全米ネットで放送されること自体がほとんどなく、購入自体が米国側にとってもチャレンジングだったと言える。
この際に、米国の放送事情に合わせ、番組の尺を30分枠と一定にし、新たなオープニングや楽曲、英語ナレーションを加え、TBS番組を基にした米国版『Ninja Warrior』が誕生した。
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