日銀の利上げで生じる「奨学金」の思わぬ誤算 貸与利率が10年ぶり高水準、増加する返済負担

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貸与利率の上昇は返済額の増加につながる。とりわけマイナス金利時代に借り入れた学生にとって、貸与利率の上昇は想定外の事態となりそうだ。

第二種奨学金は借り入れ時ではなく貸与終了月の7カ月後に返済が始まり、前述のとおり貸与利率は貸与終了時の市場金利を参照する。第二種奨学金を利用する学生数は毎年60万~70万人。これから貸与利率が確定する学生の中には、マイナス金利下で超低金利だった利率を前提に借り入れた事例もありそうだ。

JASSOが公表している試算によると、4年制大学に通う学生が月額8万円の奨学金を借りた場合、借入総額は384万円になる。これを20年で返済すると、月の返済額は金利が1%なら1万7737円、2%なら1万9582円だ。貸与利率の上限である3%まで上昇すれば、2万1531円に増える。

金利上昇の余波は、奨学金と似た制度である国の教育ローン(教育一般貸付)にも及んでいる。こちらは日本政策金融公庫が貸し付けているが、2023年に金利が従来の1.95%から2.25%に引き上がっている。奨学金と異なり、国の教育ローンは最短で借り入れの翌月から元金ないし利息の返済が始まる。

貸与利率が上昇する一方、金利ある世界では物価上昇を通じて給与も増える傾向にある。連合が4月4日に発表した春闘の3次集計では、定期昇給とベースアップを合わせた賃上げ率が平均5.24%に達した。奨学金を利用する学生にとっては、返済負担に耐えうる給与を得られる職業につけるかが重要になりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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