安保関連法案は、結局のところ違憲?合憲? 小林節氏(違憲)、長尾一紘氏(合憲)に聞く
──1972年の当時の田中角栄内閣は、日本の個別的自衛権を認める一方で、集団的自衛権は認められない、という見解を示した。これを根拠として、今回の安保法案は従来の見解からの逸脱だ、と批判する声がある。
しかし、そもそも政府見解を変えてはいけない、というルールはない。最高裁の判例もしばしば変更されるが、問題とされることはない。状況が変化すれば、憲法判断の変更が必要とされることも、少なくない。たとえば、終戦後、家賃統制令は合憲とされた。なぜなら、当時は住宅難という事情があったからだが、今であれば違憲だ。
自衛権の枠内でなしうる行為も条件によって変化する。40年前の中国は軍事的には脅威ではなかった。かつては、個別的自衛権の枠内でも日本の安全保障を確保しうると考えられていたが、状況は一変した。日本の安全と国民の権利保障を確保するためには、現在では、集団的自衛権の行使が必要になった。
「合憲論の憲法学者は100人以上いる」
──集団的自衛権を合憲とする憲法学者は少数だといわれているが。
10人程度などと報道されることもあるが、そのようなことはない。いくつかの学会があるが、比較憲法学会では、半数程度が合憲論者ではないかといわれている。トータルで、100人以下ということはありえない。
違憲論者は、さまざまなスローガンを生み出している。「戦争のできる国にする安保法制」、「米国の戦争に巻き込まれるな」などなど。同じようなスローガンが「PKO協力法」のときにも、60年の安保改定のときにも叫ばれた。しかし、これらのスローガンは、すべて誤りだった。
(「週刊東洋経済」2015年6月27日号<22日発売>の「核心リポート06」を転載)
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