菅義偉氏「派閥問題」で沈む今の自民党に思うこと 完全無派閥の前首相が国民の自民党離れに危機感
塩田:首相在任中、もう一つ、大きな判断は、安倍内閣の下で「1年延期」を決めた東京オリンピック・パラリンピックの実施だったと思います。残念なことに、関連して後に刑事事件が発覚するという事態となりましたが、首相として、1年延期後の実施について、どういう姿勢と方針で臨んだのですか。
東京五輪の開催中止は全く考えなかった
菅:五輪は東京都が立候補し、安倍政権が応援をして、招致したイベントです。確かにコロナとぶつかりましたけど、コロナへの対応策には自信がありました。当時、7割近い人が開催反対と答えたという世論調査の結果もありましたけど、57年ぶりに日本で開催される五輪ですから、我が国の将来を考えれば、どんなことをしてもやり遂げるべきだと思っていました。
また、私はずっとインバウンド拡大の旗振り役をやってきました。五輪を開催すれば、世界中の約40億人がテレビやパソコン、スマホなどで五輪を見ます。コロナの中でも安全に五輪を開催する姿を世界中の人々に知っていただけます。そうしたことを考えたときに、招致に成功した五輪をやめるという考えは全くありませんでした。結果として、開催して本当に良かったと思います。選手の方々をはじめ、多くの方々からお礼を言われましたし、海外のメディアでも高く評価されたと聞いています。
塩田:政権担当は1年の短期に終わりましたが、具体的な政策課題で、いくつも新しい取り組みを打ち出したのが記憶に残っています。
菅:私がやったことでは、例えば携帯電話料金の値下げがあります。ある意味、国民から見て当たり前の政策だと思います。結果的に、この3年間で何と6500万人以上の方々が、新しい料金体系に乗り換えているんですね。総額で1兆3000億円ぐらい、料金が軽減されているといわれています。
ほかにも、長年、未解決だった課題に決着をつけようと思って取り組みました。その一つが不妊治療への保険適用です。少子化が問題になっていますが、子供を産みたいけど産まれない人に対する不妊治療は、料金が高すぎるので、保険適用にしてくれという声がずっとありました。しかし、厚労省は「病気ではないから、保険はダメ」という対応でした。私は2020年9月の自民党総裁選でこれを公約に掲げました。政権を担って、改めて厚労省に検討を指示し、2022年4月から保険適用が実現しました。
それと、私はカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現にいつか取り組みたいと思っていたんです。総理になって初めての国会での所信表明演説で、各方面の抵抗を気にせず、「2050年カーボンニュートラル」宣言を出しました。
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