日本の在住外国人メディア、知ると驚く「深い世界」 日本の大企業も広告出稿「アルテルナチーバ」に迫る

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そのガッツで少しずつ広告主を増やし、経営は安定していったが、2008年にリーマンショックが襲う。多くのブラジル人が勤める製造業は大打撃を受け、たくさんの失業者が出たし、帰国する人も多かった。

「アルテルナチーバ」の広告は激減し、売り上げは60%も落ちた。

「それでも、付き合いの長いお客さんたちが広告を出し続けてくれたんです。ブラジル人も日本人もいました」

紙媒体を発行し続けている理由

長年かけて培ったそんな信用を糧にコロナ禍もどうにか乗り切ってきたが、気になるのは紙媒体を続けている理由だ。印刷や流通経費、紙代、倉庫代などがかかる紙媒体はいまや全世界的に経営が厳しい。

アルテルナチーバの編集部
こざっぱりした編集部。テレワークの社員も多い

僕の住んでいたタイでも日系エスニックメディアは次々に消え、ウェブ版のみにするところも増えている。

「もちろんSNSも活用していますが、読者も広告主も紙のほうに信頼を持ってくれているように思います。紙ならちゃんと手に取れますしね」

とはいえ経営のかじ取りはなかなかに大変で、雑誌単体のほかにウェブ版、ホームページ制作、デザインなどのサービスを展開しつつ会社を運営している。いまでは12人のスタッフを雇うまでになった田井さんに、ビジネスポリシーを聞いてみた。

「いい商品をつくれば広告は絶対に入るんです。だからブランディングをしっかりやることですね」

広告で成り立っているフリーペーパーだからまずは広告を集めなければと誰もが思うが、その前にいい内容の記事をつくること。そしてブラジル人のコミュニティーに貢献できるものであること。そうすれば広告はついてくるのだと田井さんは力説する。

こうして20年以上の歴史を刻んできた「アルテルナチーバ」を含め、エスニックメディアの存在を多くの日本人はまだまだ知らない。ユタカのような企業は少ない。もしかしたらそこには、未知のマーケットが広がっているのかもしれない。

室橋 裕和 ライター

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むろはし ひろかず / Hirokazu Murohashi

1974年生まれ。週刊誌記者を経てタイに移住。現地発の日本語情報誌に在籍し、10年に渡りタイ及び周辺国を取材する。帰国後はアジア専門のライター、編集者として活動。「アジアに生きる日本人」「日本に生きるアジア人」をテーマとしている。主な著書は『ルポ新大久保』(辰巳出版)、『日本の異国』(晶文社)、『おとなの青春旅行』(講談社現代新書)、『バンコクドリーム Gダイアリー編集部青春記』(イーストプレス)、『海外暮らし最強ナビ・アジア編』(辰巳出版)など。

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