「今の米国株はITバブル時に近い」は本当だろうか FRBへの株式市場の信認は簡単には崩れない

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今、株式市場では「新技術への期待が株高を引き起こした1990年代後半のIT株ブームに近いことが起きているのではないか」と意識されている。

現在起きている技術革新が、1990年代後半と同様、広範囲に経済成長に影響するかという問いに対して、筆者は現時点では根拠ある分析を示せない。

現在はITバブル初期の局面に近い?

ただ、当時の米国株市場を思い出すと、新技術への期待が金融市場にユーフォリア(陶酔感)を広げ、一部の企業については通常働く企業価値評価が機能せずに過大になり、株式市場全体が上昇することは起こりうる。
これは筆者の感覚にすぎないのだが、現在はITバブルの初期局面(1997年頃)に近く、新技術への期待が今後もさらなる企業価値評価の上昇をもたらしても不思議ではない。

一方、アメリカの企業は足元ではキャッシュを多く保有、投資の伸びは緩やかなままであり、1990年代後半と比べると企業の投資姿勢はかなり慎重なままだ。この観点から、当時のような設備投資拡大が起きる兆しは限定的なので、新たな技術革新による投資拡大が起きて、経済全体の成長まで高める可能性は高くないようにみえる。

このため、前述したユーフォリアを伴う1990年代後半のITブーム時のような、株式市場の企業価値評価の上昇が今後起きるかについて、筆者は懐疑的である。現在の予想PERは21倍台まで高まっているが、AIなどの新技術や半導体需要拡大への期待だけで、さらなるPER上昇を期待するのは難しいのではないか。

ただし、この想定は、今後のアメリカ企業の投資支出行動によって変わりうる。メインシナリオではないが、これまで慎重だった同国企業の投資姿勢が何らかの要因で積極化して、企業の設備投資が増えて、1990年代後半同様、経済全体の成長を高めるシナリオも決して無視できない。もし、このシナリオが意識された場合は、米国株市場は年初(1~3月)のペースでの上昇が年末まで続き、2023年を超える株高となりうる。

筆者は、このサプライズシナリオが起きるかどうかを考えるうえで、同国企業の投資行動を示す耐久財受注などの大幅な回復が示されるか否かに注目している。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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