大人の教養は「教科書」で身につけよう! 下手なハウツー本よりずっと使える

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あえて不便なものを

竹製で長さ18センチ。七つのセンチの目盛りと、反対側にミリの目盛りがある。2013年、素数の577円で発売すると3週間で1千本を完売した(撮影:写真部・長谷川唯)

「勉強」は、中国語では「無理強いする」の意味。勉強の道具、教科書や参考書はまさにネガティブイメージの塊だったが、「もっと知りたい」「頭を使いたい」欲求に応えるものだと発見した。そういう意味で、教科書や参考書ではないが、ピタリと来るものがある。京都大学の「不便益システム研究所」が開発した「素数ものさし」だ。

代表を務める川上浩司教授は「不便のいいところを研究するのが不便益システム研究所」。通るたびに道がかすれ、3回目には道が消えてしまうカーナビ、リアルなジェスチャーをしないと立ち上がらないスマホのアプリなどを研究開発。初の商品化が「素数ものさし」だ。

2、3、5……と「素数=1とその数でしか割り切れない自然数」の目盛りしかない。「4を測るには?」と川上教授。「えーっと、2を測って、また2を測る?」と答えると、「それもいいですし、『7・3』という方法もある。素数ものさしは工夫が必要。考えないとできないから面白いでしょ?」

便利なことを不便にしよう。そうすると絶対にいいことがある。システムが発展する──。

「難しいですね」と一言漏らすと「そうなんです。でも、学生と演習やワークショップで不便益を考えることが多いのですが、学生は頭が柔らかいのでいろいろ出てきます。しかも、2~3日もすればハマる。発想の転換ができるようになりますよ」と川上教授。私も「不便益」を考え続ければ、いつかは京都大学の学生さん並みの頭になれるだろうか。

(ライター・羽根田真智)

※AERA 2015年6月29日号

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