その結果が1991年のマーストリヒト条約である。しかし、その後の通貨統合では欧州の凋落を止められなかった。米国は急速に生産性が伸びている最中だったし、アジアでは経済発展が始まっていた。ユーロ危機は2008年に始まったが、加盟国のGDP(国内総生産)成長率は現在に至っても依然として世界のほかの地域より低いままだ。
いかなる制度の枠組みも、有形の利益をその構成員に与えないかぎり存続しえない。
チュニジアの工芸品ギルドは、19世紀の産業化の流れに適応できず衰退した。そしてギルドのマスターを示す「アミン」は、中身のない組織の飾りとしての名称にすぎない。欧州の各機関も、同じ運命に直面するかも知れない。
新しい統合の論拠が必要
第2次大戦の影響下での欧州統合は賢明で重要な偉業であった。だが21世紀には新しい統合の論拠が必要である。ほかの連邦国家のような政治統合がないため、EUには別の有形の利益が必要となる。
欧州の人々が「より緊密な連合」という呪文を唱えるだけなら、衰退は止まらない。プーチンによるロシア再興への恐怖からではなく、共通の有形の利益に基づいた新しい統一の目的がなくては、「欧州のアミン」もまた、仕事を失うだろう。
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