私が、大嫌いな「女性活用」にこだわるワケ 「女性が競争を好まない」のは先天的か?

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日本のカイシャにできることはあるでしょうか。前回記事で書いたように、女性には、自分を鍛え引き上げてくれるスポンサーや、「こうなっていけばいい」と思えるロールモデルも少ないのです。展望を描けるような期待をかけること、ライフイベントでいずれ辞めないといけなくなるのではないかという不安をぬぐってあげることで「意識が低い」と見えている女性も変わっていくかもしれません。

今までの「男女共同参画」ではダメ

そこまで手取り足取りしないと駄目なのか、と思われるかもしれませんが、さまざまな根深い要因が絡んでの「今の女性の意識」です。「甘えるな」と口で言うだけではなく、お互いに成功体験を積み、お互いに自信をつけていくことが必要かと思います。

もちろん放っておいても上がっていける女性もいるでしょうし、一方で機会を与えても活かしきれない女性もいるかもしれません。でもそれは男性も同じ。「結果の平等」で女性全員を引き上げるべきと言っているわけではなく、これまで自信が持てなかった理由を払拭し、土台をそろえるための「機会の平等」のひとつとして、有効なポジティブアクションもあるだろうと思います。

 今回は「女性の引き上げがなぜ必要か」について、前回の組織側の要因に続き、女性側の要因を挙げました。

男性中心社会において、女は放っておくと上がっていけないのか。その答えは、YESかもしれません。今までの男性と同じように扱うという男女共同参画では、個々人は多様な生物学的特性を生かせず、社会学的ハンディを克服できない可能性があります。これでは、第5回で取り上げたような、経営サイドにも利益がある「真のダイバーシティ」にはつながりません。だから、ポジティブアクションが必要になると言えるのではないでしょうか。

個別にみれば女性優遇に見えやすい動きもあるかもしれませんが、だからといってやらないというのでは今までと何も変わりません。施策を実行する側がそのように見えない工夫をすること、そして女性が長期的に置かれてきたさまざまな背景と、その人たちに活躍してもらうメリットを周囲に実感してもらうことが大事だと思います。

なお、私が『「育休世代」のジレンマ』で「マッチョ志向」として分析した女性たちは、今回書いたような「自信がない」「男性ほど競争が好きではない」という、一般的に語られる女性像とは異なる志向を持っているように見えます。でもその「マッチョ志向」の女性ですら陥る、「マッチョ志向」だからこそ陥る罠がライフイベントに隠されています。次回は、ライフイベントがもたらすインパクトの男女差について考えてみます。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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