実在モデルを全部AIで?異例の広告制作の裏側 モデル事務所も協力、AIとの融合の先行事例に

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求めているイメージを最優先し、AIだからこそできるビジュアルを実在のモデルを起用したうえで制作する。この試みは、モデル事務所の視点からも、新しい事業モデルを探るに当たって興味深い事例になっただろう。

Rakuten Fashion Week TOKYOのキービジュアル
すべて生成AIで制作したRakuten Fashion Week TOKYOのキービジュアル(画像:©JFWO)

今日、デジタル広告においては肖像権の侵害が日常的に発生している。ネット上では画像生成用のAIモデルが無料でダウンロードでき、さまざまな人の手によって、それらが更新され続けている。デジタル広告において、同じような、そして人間的ではない雰囲気のモデル写真が使われていることに気づいている方も多いと思う。

一方で、著名人の画像を無断で用いたフェイク広告の問題も珍しい話ではない。将来的には著名人の画像を用いて学習したAIモデルによって、それらのフェイク広告が大量に作られるといった懸念を持っている人もいるかもしれない。

こうした状況下で、ファッション業界では昨今、LVMHやケリングが提唱するモデルのウェルビーイング憲章が広まり、画像生成AI向けに実在しないAIモデルが制作されるなど、大きな転換期を迎えていると砂押氏は指摘する。

「クリエイティブ業界ではAIに対して脅威を感じている人も少なくありません。しかしAIは、クリエイターの発想力を拡張できる可能性を秘めています。AIと人の共存によってセレンディピティ(偶然の幸福)が生まれ、想像もしていなかったクリエイティブも誕生してくるはずです」

消費者向けの新たな体験価値創出も

砂押氏は今後のプランについて次のように展望する。

「この技術を活用すれば、多忙な海外セレブや芸能人、あるいは病気を患っている人など、物理的に撮影が困難な人の起用も可能になります。著作権や倫理の問題と向き合う必要はありますが、新しい技術への理解があるクライアント事務所などとプロジェクトを進めていきたい。とくに消費者向けの体験価値を上げる取り組みを次のステップと考えています。新しいショッピング体験も生成AIで生み出せるでしょう」

この取り組みは始まったばかりに過ぎず、技術の進歩はまだまだ止まらない。今回の事例が周知されれば、少しずつAIと実在モデル、あるいは実在の風景をうまく組み合わせたビジュアルの生成、応用が進んでいくことだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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