日経平均「史上最高値」更新の裏で進んでいる茶番 「景気回復の実感」なき株価上昇が意味すること
そして、政府も実体経済をよくすることよりも日経平均株価を上げさえすればいいと考える。メディアは、株価が上がっていれば景気はよいとの記事を平気で書くからだ。
事実、政権の経済政策の評価をする際に、日経平均株価がどれだけ上昇したかについて言及することが多い。
先ほどのアンケートでもわかるように、日本の景気がよいと思っている人はほとんどいない。日本では、投資を行っている20歳以上の割合は約3割。その中で、景気がよくなっていると感じるほど大量に投資をしている人の割合はさらに少ない。
しかし、日経エコーチェンバーの内側にいると、その外側にいる人たちが感じている「実感」には気づきにくい。その結果、世間の景況感とは必然的にずれてしまうのではないだろうか。
そして、そのウラで深刻な事態が進んでいる。
貯金ゼロの単身世帯は2021年から2023年にかけて、33.2%から36%に増加し、貯金ゼロの2人以上の世帯は22.0%から24.7%に増えているのだ(金融広報中央委員会の調査に基づく)。
日経平均が最高値を更新しているあいだに、貧困層の割合も増えていたのだ。
ケーキを食べればいいじゃない?
はやりの新NISAによって、投資しやすい環境が整っている。
それ自体は悪いことではないが、マリー・アントワネットの言葉を、僕は連想してしまう。
「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない」(本当はマリー・アントワネットの言葉ではないという説もある)
そもそも、多くの人が投資を始める理由は、老後への不安からだ。
「将来、十分な年金をもらえない。2000万円足りなくなる」と言われ始めたころから、投資ブームが始まった。
ピケティの「r>g」という話もあった。労働分配の成長よりも資本分配の成長のほうが大きいから、貧富の差は拡大する。つまり投資をしている人のほうが有利になる。
そういった話を踏まえると、新NISAに政府の別の意図を感じてしまう。
「社会保障だと不十分だから、自己責任でお金を増やしてね」
そうは言っても、(実質)賃金はなかなか増えない。すると、政府はこんなことをささやくのだ。
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